もしも「ウルトラミキサー」をもらったら

のび太とドラえもんが帰宅すると、お父さんが古道具屋で買ってきた大きな壺(つぼ)が邪魔だと、お母さんがきつく文句をつけていました。これではお父さんがかわいそうだ、なんとかしてあげようと考えた二人は、ある斜め上の解決策をひらめきます。

そのときに使われたひみつ道具が“ウルトラミキサー”です。

機能と効果

ドラえもんのウルトラミキサーは、二つのものをミックスして、一つの新たなハイブリッド(合成物・交配種)にするひみつ道具です。

樽型の本体から2本のホースが伸びていて、先端に吸引口が付いています。それらの吸入口を別々のものにあてがってスイッチを入れると、「ブウン」と中へ吸い込んで一つのものにミックスして、本体の上部から吐き出します。

一つの独立した物体であれば、どんなものでもミックスできます。たとえそれが生きものだとしても例外ではありません。

ミックス後は、元となった2種類のものが持つ性質を併せ持った、今までにない不思議なものになります。原作漫画では、次のようなハイブリッドが確認できました。

イヌとネコ
イヌとネコのキメラ(合成生物)。
壺とバスタブ
壺の模様とフォルムが継承されたバスタブ。
ゴミ箱と掃除機
掃除機の機能が備わったゴミ箱。
テレビとタンス
テレビが内蔵されたタンス。
アイロンとポップアップトースター
上部がトースターで下部がアイロンの新型家電。
電動シェーバーとライター
火を噴くシェーバー。
冷蔵庫と和式トイレ
冷却機能付きトイレ。
のび太とドラえもん
のびえもん。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』第7巻「ウルトラミキサー」より

ハイブリッドは、いつでも元の二つに戻せます。原作漫画に直接的な描写がないため分離方法は不明ですが、当サイトでは便宜上、ウルトラミキサーの吐き出し口に入れると、二つの吸入口から元のものがそれぞれ出てくると仮定します。

有用性: ★★☆☆☆

原作漫画における使用例からして、家電をまとめるのがウルトラミキサーの主な用途なのでしょう。たしかに多機能家電は家内の物を減らせてすっきりします。

ただし多機能だからといって必ずしも便利だとは限りません。今までに数々の多機能家電が発売されてきたけれど、定着した品物は限られています。多機能さは煩雑さと紙一重。機能が絞られていたほうがシンプルで使いやすいものです。

それにどんな家電の組み合わせでも、スマホにはかないません。電話でありながらカメラでもあり、スケジュール帳でもあり、ナビ付きの地図でもあり、辞書でもあり……。機能を挙げていけば切りがないスマホはいわば「究極の多機能家電」です。

スマホが普及した現代にウルトラミキサーの出番はすくないでしょう。

実用性を二の次にするなら話は別です。誰得な俺得ガジェットならいくらでも作れます。むしろこっちがウルトラミキサーの本領でしょう。CASIOの謎な多機能腕時計に惹かれるようなガジェット好きの御仁にとっては垂涎の的になり得ます。

危険性: ★☆☆☆☆

ベースにしたものが持っていない性質をウルトラミキサーが新たに付与することはないので、安全なものから危険なハイブリッドは生じません。

また、予想に反するハイブリッドになってしまっても、簡単に元の二つに分離してやり直せます。

悪用度: ★★★★☆

生きものすらミックスできるのがウルトラミキサーの恐ろしい点です。人を人間以外とミックスしたならば、それはもう人ではない「人外」です。勝手に誰かを人外と化するのは、許されざる所業です。

現代のテクノロジーでハイブリッドを元に戻すのは不可能でしょう。ウルトラミキサーで分離してあげない限り、一生涯を人外として生きていかなくてはなりません。

秘匿性: ★★★☆☆

生きものを含むハイブリッドは、それが「あるはずのないもの」だと誰の目にも明らかです。とはいえ人前でミックスしたり、ハイブリッドを見せびらかしたりしなければ問題ない話。節度ある運用なら秘匿するのも難しくはないでしょう。

革命度: ★★★★★

ウルトラミキサーが登場する原作エピソードでは、のび太とドラえもんをミックスしてのびえもんが誕生しました。きれいなジャイアンに並ぶ珍キャラクターです。

いうまでもなく、のび太は人間で、ドラえもんはロボットです。生きものと機械が等しく統合したのびえもんは、アンドロイドともサイボーグとも違う、まるで新しい次元の生命体です。

生きものを含むハイブリッドをウルトラミキサーで作ることは、神の領域に足を踏み入れたも同然だといっても過言ではありません。

余談ですが、ウマと竹のキメラであるひみつ道具の“ウマタケ”は、おそらくウルトラミキサーを用いて作られた種なのでしょう。

まとめ

機械や道具を組み合わせるのは、すでにメーカーが商品開発でやりつくしたように思えます。かといって生きもの掛け合わせるのは倫理的に問題があります。

使う人の発想次第で意外な逸品が作れるかもしれないポテンシャルを感じさせるウルトラミキサーだけれども、身近なものをいくつかミックスして「これは!」という当たりが出ないと、そうそうに飽きてしまいそうです。

というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ウルトラミキサーの優先度は星1.5つです。

道具名称:
ウルトラミキサー
原作初出:
『ドラえもん』第7巻「ウルトラミキサー」
カテゴリ:
「う」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第7巻 / 製造
公開日:
2016年09月09日
著者:

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