遅刻の多いのび太は、家が学校のすぐ隣だから遅刻したことがないと言う同級生をうらやましく思いました。そこで学校の隣へ引っ越そうとママにおねだりしたけれど、相手にされるはずもありません。
そこでドラえもんは学校を野比家の隣に引っ越しさせればいいと、ひみつ道具の“ひっこし地図”を取り出しました。
ドラえもんのひっこし地図は、建物の場所を交換できる地図です。
この地図の建物部分は、何度も剥がしては貼れるシールになっています。建物の場所を入れ替えて貼り直すと、実際の建物もそこへ瞬間移動して引っ越します。
地図のエリアを指定する方法は不明。当サイトでは、ひっこし地図を中心としたエリアが自動的に表示されると仮定します。ちなみにアニメ版(第2作第2期)では、口頭で指定していました。
職場や学校を自宅の隣へ引っ越しさせれば、通勤・通学が楽ちんだ! ってそれはそうだけど、他人の不動産を勝手に入れ替えるなんて言語道断です。
自分が所有している不動産の移築にひっこし地図を使うにしても、建築基準法やらなんやらに抵触して問題になるでしょう。
だいたい建物がある日突然変わったり消えたりしたら、「なにごとか⁉」と騒ぎになるのは避けられないから、おちおち使えたもんじゃありません。
建物を丸ごと瞬間移動させるのはかなり乱暴なことです。想定外の事故が起こる可能性は否めません。
ひっこし地図は他人の不動産だろうがなんだろうが問答無用で瞬間移動させられます。
原子力発電所、病院、駅……。インフラを無秩序に配置替えして、社会を機能不全に陥らせることすらたやすいでしょう。
もちろん普通の家を勝手に移動させるだけでも、とんでもなく迷惑な所業です。
よっぽどな過疎地の空き家でもなければ、建物が入れ替わればすぐに誰かが気づきます。人のいる建物を瞬間移動させた場合は論外です。
その騒ぎをひっこし地図と結びつける『ドラえもん』ファンがいたとしても、ひっこし地図の所有者まではたどり着けないでしょう。プライベートな空間で行われたひっこし地図の貼り替えを人が知る由もありません。
漫画『DEATH NOTE』で“デスノート”の所有者を探偵Lが突き止めたように、ひっこし地図の所有者を突き止める人物は果たして現れるでしょうか。
大抵のひみつ道具は、この世に1個だけあっても社会への影響は限定的で、普及して初めて変革をもたらします。
しかし、大阪あべのハルカスや横浜ランドマークタワーのような巨大な建造物でさえ瞬時に移転させられるひっこし地図なら、1枚あれば十分に世の中が変わります。
政府がひっこし地図を正しく運用すれば、国民はとてつもない恩恵を得られるでしょう。
問題はこういった超常の力を人類が授けられたとき、果たして正解を導けるか否かです。
自分の都合のいい町になるようにひっこし地図であれこれ配置換えしまくったドラえもんとのび太は、パパとママにこっぴどく叱られました。そりゃそうだ!
ひっこし地図の効力は個人で使うには規模が大きすぎます。国に寄贈するにしても、「ドラえもんのひみつ道具」なんて代物を、いったいどう説明すればいいのやら。
やっぱり個人で気ままに使えるひみつ道具のほうが好ましい。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ひっこし地図の優先度は星
つです。