もしも「地球セット」をもらったら

ジャイアンとスネ夫にプラモデルを自慢されて悔しくなったのび太は、自分が今作っているのはもっとすごいと嘘をつきました。ドラえもんにあきられながらも無理やり“四次元ポケット”をあさると出てきたひみつ道具が“地球セット”です。

名称

ドラえもん最新ひみつ道具大事典』などの一部の媒体では、「地球製造セット」と表記されています。

機能と効果

ドラえもんの地球セットは、小さな地球を製造して、惑星の成り立ちや生物の進化を観察できるひみつ道具です。下記の7点がセットになっています。

手順は、まず宇宙台紙を平らな場所に敷きます。その上にちりAとちりBをまくと宙に舞うので、それにガスを吹きかけて混ぜます。そこに太陽ランプの光を当てれば準備完了。時間が経つにつれ、ちりとガスが渦巻いて固まって地球になります。

製造されるミニ地球はサッカーボールほどの大きさですが、かんさつ鏡を使えば、アメーバを見てとれるほどズームで拡大して、隅から隅まで観察できます。

かんさつ鏡はミニ地球への入口も兼ねています。かんさつ鏡のスクリーンを外して中へ入ると、“ガリバートンネル”のように体が小さくなって、ミニ地球へ到着します。

実時間の1分が、地球セットの時間では1億年に相当します。宇宙時計の針を進めると、地球セットの時間も進みます。

有用性: ★★★☆☆

地球の歴史と生物の進化の過程を学ぶ教材として、地球セットは文句なしに優秀でしょう。縮小版とはいえ現物ですから、普段は自然科学に興味がない人でも観察せずにはいられないはずです。

恐竜などの今はもう絶滅してしまった生物の生態をまのあたりに見るのは、誰にとってもエキサイティングな体験ですし、生物学的にも多大な成果をあげられます。

原作では、恐竜の生息する中生代まで進んだときにアクシデントでミニ地球を壊してしまいました。そのため断定はできないものの、おそらく順調にいけばミニ人間が誕生すると思われます。

ミニ人間も私たちと同じ人間です。彼らの創造主として、人ひとりの手に負えないほど大きな道義的責任が生じます。観察して楽しむどころの話ではありません。ミニ人間の誕生を有用と考えるか否かは、思想によって完全にわかれるでしょう。

とはいったものの、ミニ地球の時間がドラえもんの生まれた時代まで進めば、ミニ人間たちはミニひみつ道具を使って別の宇宙へ旅出つように思えます。 ミニ人間にしてみれば凡人が創造主として君臨しているのは気にくわないでしょうから。

ミニ地球から希少な資源などを持ち帰ることも考えられます。しかし、ガリバートンネルを逆行しても元のサイズより大きくはならないように、ミニ地球の物も小さなままでしょう。どんなに貴重でも、毛の先ほどもないサイズでは意味がありません。

情報など、形のないものは例外です。我々の地球よりも時代が進んだミニ地球から未来の技術を知識として持ち帰れます。我々の地球とミニ地球の歴史がどこまで一致するのかは不明ながらも、日本に住む者としては大地震の記録も参考になるはずです。

危険性: ★★★☆☆

ミニ恐竜が誕生したらミニ地球に降り立って、じかに見たくなるもの。リアル『ジュラシック・パーク』です。でも恐竜が闊歩(かっぽ)する世界は、そんな好奇心だけで気軽に行って無事に帰ってこられるほど甘くないのはいうまでもありません。

映画『ジュラシック・ワールド』予告編

中生代に限らずとも、「生身の人間」は肉食動物のいいエサです。文明の及ばない場所では捕食される側であることを忘れてはなりません。

ミニ地球へ行き来するには、かんさつ鏡が正しくセットされてなければならない点も要注意です。ミニ地球にいるときに地震などの振動でかんさつ鏡が外れると、二度と帰れなくなってしまいます。

ミニ人間たちが独立を求めて攻撃を仕掛けてくる可能性もあるでしょう。ミニ地球の独立戦争です。ミニ人間の存在はどう考えても脅威です。

悪用度: ★★★☆☆

アリの巣を壊す子供のように、ミニ人間たちの文明を破壊すると、ある種の満足感が得られるでしょう。ただし子供の無邪気さからくる残酷性とは違って、大人のそれは弁解の余地のないただの邪気(悪意)です。

秘匿性: ★★★☆☆

地球セットは1メートル四方ほどの宇宙台紙の上に、サッカーボール大のミニ地球が浮いています。これは結構な大きさ。その上、ミニ地球はなんの支えもなしに宙に浮いているのだから、かなり目立つひみつ道具だといえます。

とはいえ、地球セットは人前で使う必然性のないひみつ道具です。無断で人に入られない部屋を確保できるのなら、特に問題なく秘匿できます。秘匿性は住んでいる物件や同居している家族構成しだいでしょう。

革命度: ★★★★★

もう一つの地球を創り出すだなんて、神の御業だといっても過言ではありません。

まとめ

地球セットにはグレードアップ版にあたるひみつ道具の“創世セット”があります。一長一短で地球セットがあながち劣っているともいえないものの、創世セットは惑星を創造する場所が宇宙台紙の上ではなく、別宇宙なのが利点です。

また創世セットなら、創造した惑星の管理を放棄しても別宇宙でひとりでに歴史を刻み続けます。これなら手に負えなくなっても困りません。

となればもらうのは創世セットのほうがいい。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、地球セットの優先度は星0つです。

道具名称:
地球セット
原作初出:
『ドラえもん』第5巻「地球製造法」
カテゴリ:
「ち」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第5巻 / セット / 製造
公開日:
2015年08月28日

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