のび太の家の前で遊んでいたしずかちゃんが遊びに使っていたボールを屋根の上に乗せてしまいました。屋根に乗っかった物を取るのは大変です。そこでドラえもんは、ひみつ道具の「ピーヒョロロープ」を取り出しました。
ドラえもんの「ピーヒョロロープ」は、蛇使い[1]のヘビのように操れるロープです。
ロープの入った籠と、インドコブラをモチーフにした笛、そして専用の楽譜で構成されています。
楽譜の曲を笛で吹くと、ロープがひとりでに動き出して、曲名に添った働きをします。原作エピソードには以下の6曲が登場しました。
のび太が初見で吹けたことから、曲の難度はとても低いことがうかがい知れます。
「もってこい」の曲は汎用性が高く、「ピーヒョロロープ」がちょっとした従者になります。「自宅でお気に入りの定位置に落ち着いたら、もう動きたくない!」というのび太みたいな人にうってつけです。
問題は笛を吹かなければならないこと。遮音性能の低い集合住宅だと、近所トラブルになりかねません。それにせっかちな人なら「笛を吹く暇があるなら自分で動いた方が早いわ!」と思うでしょう。
ロープを使った荷造りは直接やるより笛を吹いたほうが楽。とはいえロープが必要になるのは、よほど大掛かりな荷造りだけです。大抵はガムテープや荷造りひもで簡単に済むから、「にづくり」の曲が活躍する機会は限られます。
特殊な応用方法もあります。それはのび太の家に泥棒が入ったときのこと。その泥棒が「にづくり」の曲を吹いたところ、自分で自分を縛り上げる結果になりました。
つまり「ピーヒョロロープ」には「緊縛」という大人な使い道もなくはないということです。
前述のように「にづくり」の曲は自分自身を荷造りしてしまう危険性があります。「ピーヒョロロープ」による荷造りはしっかりしているから、自分一人でほどくのは困難です。
一人暮らしだったら最悪です。大声で助けを呼ぶしかありません。誰か来てくれるまで、身動きできない状態で耐えなければなりません。
一人のときは「にづくり」を吹かないほうが身のためです。
「ピーヒョロロープ」の「もってこい」は窃盗に使えるでしょう。けれど「笛を吹く」という人の注目を集める行為が発動条件なので、悪用にはまったくもって向いていません。
やはり笛の音がネックです。まさか未来のひみつ道具を使っているとは夢にも思われないにしたって、無駄に近隣住民の注目を集めるのはマズい。
楽器可の物件で一人暮らしでないと、「ピーヒョロロープ」の普段使いは厳しいでしょう。
「ピーヒョロロープ」でやれることと言ったら、日常のちょっとしたお手伝いです。これ一つで社会は変わりようがありません。
ロープ型ロボットだと考えれば、「ピーヒョロロープ」はそこまで荒唐無稽ともいえません。現代社会にもたらす影響は限定的でしょう。
「ピーヒョロロープ」は一発芸的なひみつ道具です。笛の演奏で操るのを楽しめるのは初めのうちだけで、すぐに面倒になるでしょう。
せめて音声で指示できたら……ってあるんです、音声コントロールのロープ型ひみつ道具が! 「ナゲーなげなわ」です。
「ナゲーなげなわ」は「もってこい」に相当する機能しかないものの、その代わり音声でコントロールできます。「どうしても笛で操作したい!」という奇特な方以外は、あえて「ピーヒョロロープ」を選ぶ理由はないでしょう。
笛を吹くより、自分の手を動かした方が話が早い。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、「ピーヒョロロープ」の優先度は星
つです。