ドラえもんが生まれた22世紀では、竹馬は廃れていて、代わりに“ウマタケ”なるものがあるそうです。ドラえもんに「でも、あれはちょっと」と言いよどませるウマタケとは、いったいどんなものなのでしょうか。
ウマタケは、ウマと竹を人工的に合成したキメラ(合成生物)です。生きものなので、正確にはひみつ道具ではありません。
プライドが高く、気性が激しい、正にじゃじゃ馬です。しかし難しいのは背中に乗るまで。機嫌をうまくとって一旦乗ってしまえば、乗馬のテクニックがまるでなくても、容易に(のび太でさえ)乗りこなせます。
ドラえもんによると「ぜったいにひっくりかえらないし、すごいスピードで走る」とのこと。とても身軽で、のび太を乗せたまま、家屋の屋根から屋根へと飛び移りながら走りました。
食事や排泄などの生命活動も当然します。食性は通常のウマと同様らしく、ドラえもんはニンジンで機嫌をとっていました。体躯がとても細いにもかかわらず、排泄量もウマとほとんど変わりません。
また、竹馬の足場に相当する出っ張りが背中にあります。いうまでもなく、ウマタケは竹馬のパロディです。
ペットとしては気性が激しすぎます。また、運動量が半端ないので集合住宅では飼えません。おそらく、飼育に掛かるコストは、通常のウマと同程度でしょう。ウマが飼えない家庭では、ウマタケも飼えないと見積もるべきです。
乗り物としては目立ちすぎます。未知の生物であるウマタケは、人目に付けば大きな騒ぎを避けられません。街中で乗馬するのは無謀というものです。
ウマタケを存分に走らせることができる広大な敷地と、ウマを飼育する知識と経験がある牧場主などなら、あるいは最適なペットかもしれません。
ウマタケの乗馬がいくら簡単とはいえ、振り落とされる危険性はついてまわります。落馬は、死亡することすらある危険な事故です。乗馬のプロである騎手ですら落馬することは珍しくないことを忘れてはいけません。
なにせウマタケは家屋の屋根に飛び乗るほどのジャンプ力があるのですから、通常のウマに乗馬するよりも、はるかに危険性が高いでしょう。
ウマが悪用されたという話は聞いたことがありません。ウマタケも、悪事に関する使い道は特にないでしょう。
生きものを完全にコントロールするのは困難です。都心で人知れずウマタケを飼育するのは不可能でしょう。秘匿するには、隣の家まで数キロ離れているような立地条件が必要になります。
動物と植物の垣根を越えて掛け合わされたウマタケは、この世の節理を超越した存在です。ウマタケを世間に公表したならば、倫理観と宗教観を巡る論争が巻き起こることでしょう。
ウマタケの研究は、神への冒涜として、宗教団体から弾圧されるかもしれません。仮に研究が進んだとしても、生態系への影響などを根拠に、新たなキメラを作り出すことは厳しく制限されるはずです。
ちなみにウマタケは、“ウルトラミキサー”を用いて作られた種だと推定されます。動物と植物どころか機械ともミックスしてしまえるウルトラミキサーが普及している未来の世界では、現代とは違う倫理体系が構築されているのでしょう。
残念ながら、ウマタケを飼えるだけの広い土地は持ち合わせていません。ウマタケに乗るのはとても楽しそうだけど、飼うのはどう考えても無理っぽい。
ウマタケを勝手に連れて帰ったジャイアンは、暴れるウマタケに家の中をめちゃくちゃにされてしまいました。ドラえもんの「あれはちょっと」とは、こういった状況を予期しての言葉だったのでしょう。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ウマタケの優先度は星
つです。