同級生たちより発育のいいジャイアンは、体格差に物をいわせてみんなをねじ伏せて、王様気取りです。
のび太はそれが悔しくて、大男になってジャイアンをやっつけたいと思いました。
そこで大男になる代案としてドラえもんが取り出したひみつ道具が“からだポンプ”です。
ドラえもんのからだポンプは、体の部位を膨らませるポンプです。
手動式ポンプから伸びているホースの先が吸盤になっています。この吸盤を体にくっつけてポンプで膨らませると、その部位がどんどん巨大化します。吸盤を外せば、すぐにしぼんで元に戻ります。
最大膨張率は不明。ここでは10倍のサイズまで膨らませられると仮定します。
大きくしたい体の部位といえば、男性ならアソコ、女性ならバストでしょうか。
どこを膨らませるにしても、からだポンプを吸着させているあいだしかサイズを保てません。体のコンプレックスの根本的な解消にはなりません。
のび太はというと、巨大化させた手や足だけをジャイアンに見せてビビらせました。からだポンプはきっとそんなイタズラに使うためのジョークグッズでしょう。実用性を求めるのはお門違いです。
体の一部位だけが巨大化したら、その部位を支える間接や腱に甚大な負荷が掛かります。けれどのび太はからだポンプで巨大化させた部位をこともなげに操りました。
どうやらからだポンプには体を守る安全対策が施されているようです。
ただし身体感覚までは考慮されていないだろうから、「タンスの角に足の小指をぶつける」的な事故には気をつけなければなりません。
ふと窓の外を見ると、巨大な顔がこちらをのぞき込んでいた――。
からだポンプを用いたドッキリは、うまく仕掛ければ、かなりの恐怖を与えられるでしょう。
もちろん身を挺(てい)さなければならないし、シチュエーション作りも必要だし、それなりの労力と工夫が求められます。
からだポンプでイタズラするなら、当然ながら人に見せることになります。秘匿しては話が始まりません。
自分が大きくしたい体の部位――どことは言いません――をからだポンプで膨らませて、その姿を鏡に映してうっとりするだけだったら問題ありません。
いったいどうやってからだポンプは体を膨らませているのでしょうか。我々現代人の常識では計り知れないテクノロジーです。
でも体の部位が一時的に巨大化したところで、世界は変えられません。
“つけかえ手ぶくろ”やら“モンタージュバケツ”やら、人体をいじくるひみつ道具は、たとえ安全性が保障されていたって、怖くてなかなか使えません。
そしてからだポンプで得られるメリットは、わざわざ怖い思いをするほどのものではないでしょう。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、からだポンプの優先度は星
つです。