のび太は泳げません。そのことをみんなにからかわれる夏がやってきました。そこでドラえもんはのび太に水泳の練習を勧めました。
けれど練習する姿を人に見られたくないのび太は、海にもプールにも行きたがりません。
そういうことなら、とドラえもんが取り出したひみつ道具が“ドンブラ粉”です。
ドラえもんのドンブラ粉は、どこでもどんぶらこと泳げるようになる粉末です。
これを付属のパウダーパフで体中にまぶすと、床や地面に体がトプンと沈みます。そして固体の中をまるで水中みたいに泳げます。
その状態は水よりも浮力が強いため、水中よりも楽に浮かべます。
ドンブラ粉を使ったのび太が、家の床と壁や外の道路を泳いで通り抜けた一方で、浮き輪と野球ベースは触れても固体状のままでした。
このことから、ドンブラ粉の効力が及ぶ対象は、地面と、地面に固定されている物体だと推定されます。
効力を解除する方法は原作に描かれていません。当サイトでは、ドンブラ粉はシャワーなどで普通に洗い流せると仮定します。
泳げる人はみんな練習のたまものです。ある朝目覚めると泳げるようになっていた、なんてわけがありません。
多感な年頃ののび太は水泳の練習を見られることを恥ずかしがったけれど、誰もが通る道なんだから、プールで堂々と練習したって大丈夫です。ドンブラ粉を使うまでもないでしょう。
水泳の練習ではなく、物体を自由に通り抜けられるところがドンブラ粉の真価です。
その特性は探検にうってつけ。足を踏み入れるのも難しい洞窟だって、すいすい泳いで入っていけます。ピラミッドに潜って未知の空間を探したり等々、冒険心をかき立てます。
とはいえ大概の人はそんな冒険と無縁の生活を送っています。
生活圏で通常の手段では通り抜けられない場所といえば、そのほとんどは進入が禁じられている場所だから、日常生活で活用するのは難しいでしょう。
泳ぎが達者な人でも、足がつく水深でも、溺れるときは溺れます。体調の急変や、パニックによる判断力の喪失などが原因です。
ドンブラ粉は水より浮きやすいからといって、油断は禁物です。
壁や床を通り抜けられるドンブラ粉を使えば、どんな場所でも侵入できます。
防犯カメラに撮影されたとしても、「床を泳ぐ人間」というUMAさながらの映像をはたして捜査機関がまともに取り合うでしょうか。
もっとも非道な使い方は、人にドンブラ粉を無理やりまぶして、地面に沈み込んだところを押さえつけて、溺死させることです。死体を埋めて隠す手間も省けて一石二鳥という悪魔の所業です。
なにはともあれドラえもんのひみつ道具をそんなおぞましいまねに使おうなんて考えてはいけません。
目撃される可能性のある場所でドンブラ粉をどうしても使いたいなら、なんらかの扮装が必要です。人間ではない亜人(デミヒューマン)だと思わせる扮装がふさわしいでしょう。
そうやって世間の目をくらませたって、その場しのぎに過ぎません。誰もがスマホを持っていて、映像を手軽に拡散できる時代だから、おそかれはやかれ身バレします。
やはり自宅で一人楽しむのがせいぜいです。
ドンブラ粉は人体だけではなく、無生物にも使えます。これによって、地中を突き進むミサイルが実現します。
目視はもとよりレーダーによる探知もできないミサイル、つまり発射元を特定できないミサイルです。
そんなミサイルが現実のものとなったら、素知らぬふりして攻撃を仕掛ける国が現れるかもしれません。国際情勢は混迷を極めるでしょう。
もちろん市井の人が手に入れただけではそんな大ごとにはなりません。それにドンブラ粉は消耗品です。1缶だけでは使える回数は高が知れています。
可能性は秘めているものの、実際に革命が起こることはないでしょう。
ドンブラ粉はひみつ道具ならではの常識外れの体験をもたらします。実用性はさておき、「なんだか楽しそう」というのは結構な美点です。
でもまあ欲しいかというと、別段いりません。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ドンブラ粉の優先度は星
つです。