もしも「モンタージュバケツ」をもらったら

ドラえもんのひみつ道具の中には人体改造ともいえるちょっと怖い機能を持つものが結構あって、「こんなものをよく使えるなあ」とのび太の無鉄砲さに感心させられたりします。そんなひみつ道具の一つが“モンタージュバケツ”です。

機能と効果

モンタージュバケツは、人間の顔を変えるひみつ道具です。バケツ型の本体、本体とカールコードでつながっているリング、そして大量の顔写真から構成されています。

顔を変える対象者の首にリングをはめて、付属の顔写真に掲載されている通し番号を本体に入力すると、瞬時にその顔に変化します。

目・鼻・口などのパーツごとに変化させられるので、モンタージュ写真やアプリのアバターのように、複数のパーツを自由に組み合わせて顔を作り上げられます。目の位置に鼻を、口の位置に目を配置させるなど、変則的な顔にすることもできます。

リングを外しても顔は変化したままです。元の顔に戻すときは再びリングをはめてリセットします。

顔写真の通し番号には1文字のアルファベットと3桁の数字が振られています。このことから、男女それぞれ1万3千人、合わせて2万6千人の顔写真が付属されているものとします。

有用性: ★★★☆☆

顔を変えたい理由は数あれど、一番多いのはやはり「美しくなりたい」でしょう。モンタージュバケツなら、自宅で手軽に顔を整形できます。

しかし元の顔を修正する通常の美容整形と違って、モンタージュバケツはパーツを丸ごと取り替えます。美容整形の需要が多い目ですが、目を取り替えたら別人になってしまいます。「美しくなりたい」と「別人になりたい」は似て非なるものです。

よってモンタージュバケツが本領を発揮するのは「別人になりたい」ときでしょう。持って生まれた顔を捨てることの是非はともかく、美容整形では不可能なまったく別人の顔を手に入れられます。顔だけとはいえ性別の垣根すら越えられます。

美容整形よりモンタージュバケツがはるかに優れている点は、いつでも元の顔へ戻せること。一時的に別人の顔になれば完璧な変装になります。知人に知られたくない行いは誰にでもあるものです。

変則的な使いみちとして、薄毛の解消が考えられます。モンタージュバケツで変化させられるパーツには髪型も含まれているので、フサフサの髪に取り変えられえるのです。顔を変えるよりも心理的抵抗が少なく、多大な価値があります。

顔はアイデンティティーを担う重要な要素です。そのパーツを別人のものと取り換えることを有用だといえるかは、意見が分かれるでしょう。

危険性: ★★★★☆

モンタージュバケツがなければ元の顔には戻せません。盗難や故障など、なんらかの理由でモンタージュバケツが使えなくなってしまったら、一生そのままの顔で過ごす破目になります。

頻繁に顔を変え続ける使い方をした場合は、本当の自分を見失って、自分が何者なのかわからなくなるアイデンティティークライシス(自己同一性の喪失)に陥る恐れがあります。

前述したように、顔はアイデンティティーの一端を担っています。モンタージュバケツを使うに当たっては思慮を欠いてはいけません。

悪用度: ★★★★☆

有名人などの他人になりすませば、さまざまな詐欺行為がはかどるでしょう。

ただしモンタージュバケツは文字どおりモンタージュ方式なので、特定の人物の顔に似せるのには限度があります。僅かな違いが不信感につながって、あまり成功率は高くないかもしれません。

無理に特定の人物に似せなくても、自分とは似ても似つかない顔ならば、悪事を働くのに都合がいい。一般的なバケツと同程度の大きさと重量なので、持ち歩いて随時変装できます。

怪盗キッドやルパン三世、古くは怪人二十面相がごとく変装して捜査の手を出し抜く……。モンタージュバケツを駆使すれば、そんな物語の怪盗たちに一歩近づけます。

もっとも悪質な使い方は、人の顔を勝手に変えてしまうことです。特にパーツの位置を入れ替えた通常では有り得ない顔にした場合に与える心理的ショックは計り知れません。

秘匿性: ★★★☆☆

モンタージュバケツの秘匿性は運用法しだいです。例えば、ある日を境に顔を突然変えて職場や学校へ行けば当然騒ぎになります。永続的に顔を変えたいなら、生活環境ごと変えなくては秘匿性を守れません。

顔写真付きの身分証明書を発行する際でも、顔の確認は通常されません。生活環境を変えて新しい顔で運転免許証やパスポートなどを発行してしまえば、その後は大手を振って歩けます。

いつでも元の顔に戻せることも相まって、顔を変える瞬間さえ見られなければ、モンタージュバケツの存在がすぐさま白日の下に晒されることにはならないでしょう。

革命度: ★★★★☆

顔のパーツの位置を入れ替えても器官として正常に機能するだなんて、そのとき顔の中身はいったいどうなってるのか想像もつきません。肉体をそこまで劇的に、しかも瞬時に再構築するなんて、なんとも物恐ろしい機能です。

これほどまでに簡単に顔を変えられるようになると、人間の顔が持つ価値は激変するはず。モンタージュバケツが現実のものとなれば、人間社会がひっくり返るでしょう。

まとめ

自分以外の誰かになって、己の規範を逸脱して行動するのは、とんでもない解放感が得られるリフレッシュになりそうです。けれども顔を変えるのはどうにも怖い。

モンタージュバケツは、顔を変えることに対する抵抗感がどれだけあるかで、人それぞれ見いだす価値に差異が出るひみつ道具でしょう。個人的には抵抗感が強いということで、モンタージュバケツの優先度は星1つです。

道具名称:
モンタージュバケツ
原作初出:
『ドラえもん』第4巻「お客の顔を組み立てよう」
カテゴリ:
「も」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第4巻 / 人体 / 変化
公開日:
2015年06月12日

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