テレビや漫画のヒーローものに憧れる子供は多いもの。ジャイアンもその一人です。ヒーローになりきって、正義という名の暴力を振るいたくてしょうがないジャイアンにのび太は目をつけられてしまいました。
そこでドラえもんが取り出したひみつ道具が“スーパーダンのふろしき”です。
このひみつ道具の名称は、原作漫画では明示されていません。「スーパーダンのふろしき」とは公式ガイドブックの『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』に掲載されている名称です。アニメ版では「スーパーダンごっこふろしき」と呼ばれています。
スーパーダンのふろしきは、ドラえもんがやってきた未来の時代の子供たちがスーパーダン(『ドラえもん』の世界でテレビ放送している、スーパーマンそっくりのヒーローキャラクター)ごっこに使うひみつ道具の風呂敷です。
この風呂敷をマントのように背中に羽織ると、飛行・透視・肉体強化の能力が得られます。
およそ地表20センチの高さで飛べる。飛行速度は時速3~4キロ。
目の前の物体を透視できる。対象物すれすれまで目を近づけないと透視できない。
ドラえもん曰く「空気銃のたまくらいははね返す」。ただし痛みは感じる。また、コンクリートブロックをパンチで粉砕できるほどの筋力が得られる。
子供のおもちゃということでスーパーダンのふろしきの性能はごく控えめなものの、その能力はどれも実用的です。
たとえ飛行高度がおよそ地表20センチでも、災害時の避難などでは生死を分ける能力になるはず。特に津波から逃げるときは、波に飲まれずにその上を飛べるので、生還確率が跳ね上がります。
肉体強化による衝撃の低減にしても同様です。事故に遭ったときに、そのわずかな差が生死を分けることもあるでしょう。
転ばぬ先の杖として常に身に着けておけば、いざというときに必ず役立ちます。
日常においても、肉体強化で小さな怪我を防げるだけでもありがたい。また、筋力の増加によって得することはあっても損することはありません。
透視能力は……、基本的にはマナー違反なので善用は難しそうです。
子供向けだけあって、超低空飛行しかできないなど、安全性は十分に考慮されています。
透視能力とくれば異性の服を透かして勝手に裸を見る悪用が真っ先に挙げられます。
けれどもスーパーダンのふろしきによる透視能力は、対象物すれすれまで近づかないと発動しません。相手にばればれな上に、異様な接近は迷惑防止条例に抵触するおそれがあります。透視以前の話です。
更衣室を壁越しに透視するケースも考えられますが、それにしたって壁に張りつくようにしていたら不審者丸出しです。
かように自由自在に覗き見るとはいかないでしょう。しかし裸に限らずとも、透視しなければ見られないものは、基本的には無断で見ることが禁止されているものです。厳しい制限がかけられているものの、その悪用度は低くはないでしょう。
風呂敷をマント状に羽織って街を歩いたら、それはもう目立つでしょう。秘匿性を考えるなら、できればスーパーダンのふろしきは上着より中に装着したいところです。
各能力の特性からいって、飛行能力は服の外に装着して外気に触れさせなくては発動せず、透視能力と肉体強化は服の中に装着していても発動すると想定されます。
飛行能力に関しては、いざというときだけ首元から引っ張り出せば済む話。そもそも飛行能力は、(たとえそれが地表すれすれでも)人前で使えばごまかしようのないものだから、通常時は発動していないほうがむしろ都合がいいくらいです。
スーパーダンのふろしき自体の見た目は無地の風呂敷ですし、飛行しているのを目撃されでもしない限り、さほど苦労せず秘匿性を守れるでしょう。
性能が抑えられているので、これ一つで世界へ影響を及ぼすとは考えられません。
子供のごっこ遊び用に作られたひみつ道具だけれど、スーパーダンのふろしきは大人でもあながち軽視できません。控えめな性能が、かえって現実的で使い勝手のよさになっています。
これは地味に掘り出し物でしょう。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、スーパーダンのふろしきの優先度は星
つです。