のび太の優柔不断で他力本願な態度がいよいよ目に余ったドラえもんは、ここらでちょっと懲らしめるべきだと考えて、ひみつ道具の“ミチビキエンゼル”を渡しました。ドラえもんの思わくどおり、のび太は痛い目に遭って……。
ドラえもんのミチビキエンゼルは、手にはめるとその人にとって一番ためになる答えを状況ごとに話して教えてくれるパペットです。卓越した予測力を持っており、予知に限りなく近い答えを出します。
教えた答えに逆らう人には、頭をポカポカ叩いたり、腕にがぶりとかみついたりして、無理やりにでも従わせようとします。それが嫌で手にはめている人が自分でミチビキエンゼルを外そうとしても絶対に外せません。ほかの人だけが外せます。
ミチビキエンゼルのアドバイスはとても利己的で、他者の犠牲をいといません。それが本当に「その人にとって一番ためになる答え」なのかは、価値観を問われるところです。
ドラえもんが壊れそうになったときのこと。のび太は自分のことを捨て置いてドラえもんを救おうとし、ミチビキエンゼルはのび太自身のことを優先させようとしました。のび太のほうに賛同する人にとっては、あまり価値のないひみつ道具です。
それでもなおミチビキエンゼルの予測力は捨てがたいものがあります。
ひみつ道具を持っていることを打ち明けられるパートナーがいるならば、強要される前に手から外してもらえるので、要所要所でミチビキエンゼルの意見を聞いてみるのも悪くないかもしれません。
極端に利己的とはいえ、ミチビキエンゼルはその人のためになることを考えているのは間違いないので、危険どころか、安全性が高まります。
アドバイスに逆らって叩かれるなどしても、そこまでの怪我はしません。
原作でミチビキエンゼルは迷惑なひみつ道具として描かれました。とはいえ便利な面もあり、人の手に勝手にはめたとしても一概に悪用とはいえません。
それに手にはめている本人以外なら誰でも簡単に外せるので、悪用度は低いでしょう。
ミチビキエンゼルを使っている様子をはたから見れば、「腹話術をしている変な人」に映ります。とても目立つけれど、多くの人は見て見ぬふりをして近づきもしないでしょう。
顔見知りなど、構わずツッコミを入れてくる人の前で使わなければ、それが未来の道具だという秘密を守るのは容易です。
なんにせよ、手にはめたパペットと一人で話す姿を人に見られることは、ひみつ道具どうこう以前の問題です。使い勝手には支障があります。
ミチビキエンゼルの杓子定規な価値基準では、世界を変えられはしません。
ミチビキエンゼルに散々振り回されたのび太は、「自分のことは自分できめるよ」とみごと自立心と決断力を獲得しました。(まあ、次の回にはいつもののび太に戻ってるのだけど)
いくら優柔不断でも、あれこれ全部指図されたらそりゃ嫌になります。便利な面もあるけれど、やはり基本的には迷惑なひみつ道具です。
というわけで、もしもひみつ道具を一つもらえるなら、ミチビキエンゼルの優先度は星
つです。