しずかちゃんから借り(パクっ)た『シャーロック・ホームズ』を読んですっかりハマったのび太が、名探偵になれるひみつ道具をドラえもんにおねだりして出してもらったのが“ホームズ・セット”です。
趣旨からずれていることも多いひみつ道具にしては珍しく、ホームズ・セットは結構まっとうに名探偵になれます。
ホームズ・セットを身に着けると、シャーロック・ホームズのように華麗な推理で事件を解決する名探偵になれます。セット内容は下記の4点です。
この虫眼鏡を通して見ると、捜査中の事件に関するものしか写らないので、捜査の手がかりがつかめる。
シャーロックハットとも呼ばれる鹿撃ち帽タイプの帽子。これをかぶって前側のつばを跳ね上げると、途端に推理が冴え渡る。
地面に立てて手を放すと、犯人がいる方向へ倒れるステッキ。犯人が移動しても、その方向へくるりと転がって指し示し続ける。
このパイプに息を吹き込むと出てくるシャボン玉のような大きな泡は、犯人の頭の上まで飛んで行って割れるので、犯人がズバリとわかる。
ちなみに、“ホームズ・セット”とは原作漫画に初登場したときの呼称です。のちに再登場したときは“シャーロック・ホームズ・セット”と呼ばれています。
捜査機関にでも勤めてなければ、犯罪の捜査に加わることは通常ありません。
では、ホームズ・セットが活躍する機会はないかというと、そうでもないでしょう。日常的で些細なこと、例えば「冷蔵庫に入れておいた私のプリン勝手に食べたの誰!」だって、当事者にしてみれば結構な事件。ホームズ・セットの出番です。
それに事件を解決すること以外にもホームズ・セットの使い道はあります。のび太たちは、なくしものを探すのに使いました。特に論理的な思考力を一時的にブーストする推理ぼうは、あらゆる場面で有用でしょう。
身近な事件は人間関係のトラブルの種をはらんでいます。あまり深く追求しないほうが身のためになるケースも多いでしょう。解決することが本当に最善策なのか、ホームズ・セットを使う前に一度考えるべきかもしれません。
さて、名探偵といえば、行く先々で殺人事件に巻き込まれるものです。金田一少年やコナン君に出会ったが最後、生きては帰れないといわれています。ホームズ・セットで事件を解決し続ければ、多かれ少なかれ似たような境遇になってしまうかも?
まあ名探偵自身は生き残るのが常だけど……。
ホームズ・セットは事件を解決するひみつ道具だから、基本的には善用専用です。それでも、「未解決事件の真相を知った人が真犯人をゆする」なんていう2時間ドラマのような悪用が一応できます。
鹿撃ち帽もステッキもパイプも虫眼鏡も、別段珍しいものではないけれど、それらを日常的に身に着けている人となるとほとんど見かけません。よってホームズ・セットを使えば人目を引くのは避けられないでしょう。
とはいえ、シャーロック・ホームズの扮装をしているとは思われても、ドラえもんのホームズ・セットだとは思われないだろうから、ある程度の秘匿性はあります。
例外なのがズバリパイプ。明らかにあり得ない動きをするシャボン玉(のようなもの)は、はた目にもそれが特殊な存在であることが丸わかりです。
レーダーステッキも怪しいですが、手がかりレンズと推理ぼうだけあれば事足りると思われるので、さほど支障はないでしょう。
レーダーステッキとズバリパイプは犯人を指し示します。つまり、それらは初めから事件の全貌をつかんでいるのです。これは人知を超えた、いわば神の視点です。
一目で人を見抜くシャーロック・ホームズの観察眼は魅力的です。それを手に入れられる推理ぼうだけでもホームズ・セットには価値があります。頭が冴え渡って損をすることなんてないのだから。
筆頭の推理ぼうが日常的にかぶるには馴染みの浅い鹿撃ち帽タイプの帽子なのが残念なことなど気になる点もあるけれど、4点セットというお得さでカバー。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ホームズ・セットの優先度は星
つです。