給食を食べるのも遅くて、かけっこも遅くて、宿題を終わらせるのも遅くって。なにをやってもノロマな自分がのび太は情けなくなって、思わず涙がこぼれました。
そこでドラえもんが取り出したひみつ道具が“ハッスルねじ”です。
「ハッスルねじ」は原作漫画における名称です。アニメ版や『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』などでは、「ハッスルねじ巻き」と呼称されています。
ドラえもんのハッスルねじは、人をハッスルさせる(張り切らせる)ネジ巻きです。
これを人の背中にあてがってネジを巻くと、すごいスピードで動けるようになります。ゼンマイ式玩具のように、ネジを巻いた分だけ効力が続きます。
原作エピソード「ネジまいてハッスル!」でハッスルねじを巻かれたのび太は、宿題をチャッチャカ終わらせ、いつもより速い体の動きにも適応できていました。これらのことから、頭の回転も速くなると推測されます。
とにかくなんでもテキパキやれるのに越したことはありません。仕事に家事に勉強にと、ハッスルねじはあらゆる場面で有用です。
ただし背中のネジを巻く姿を人に見せるわけにはいかない――だってどう説明する?――から、トイレの個室なりなんなりで人目を避ける必要があります。
そのため勤め先などの衆人環視の状況下では、ここぞというときだけピンポイントで使う運用方法に制限されるけど、それだけでも十分です。
気兼ねなくネジを巻ける環境なら文句なし。自宅でやる用事、それこそ家事を手早く済ませるのにハッスルねじは最適です。
いくらハッスルねじの効力に頭も体もついていけるように順応するとはいえ、いつもより格段に素早い動作になってるからには油断は禁物です。
転んだり、体をぶつけたりした際に受けるダメージもいつも以上になることを忘れてはなりません。
ハッスルねじによる加速は常識の範囲内にとどまるスピードです。アメコミのヴィラン(悪役)よろしく目に見えないほどの超常的なスピードで悪事を働く真似はできません。せいぜい手と逃げ足の速い小悪党どまりです。
スポーツ選手がハッスルねじを使って競技に出るのは明らかな不正行為です。おそらく現代のドーピング検査では発覚しないでしょう。それだけに悪質です。
ハッスルねじはネジを巻いたあとは外してもいいので、「背中にネジ巻きを着けた変な人」にはなりません。けれど「妙に身動きの速い人」という違和感を周囲に与えはするでしょう。
人前でハッスルねじの効力を発揮するときは、あまり目立つ振る舞いはしないことです。
ハッスルねじで高まるのはスピードだけ、技術や知能などはそのままです。これをもってどれだけのことをなせるかは、使用者本来の能力に大きく左右されます。
並大抵の人がハッスルねじを使ったくらいでは世界は変えられません。
なにごとでも能率を上げられるのはうれしいこと。ネジを巻くときは人目を避けなきゃならないし、自分で背中のネジ巻きを回すのは難儀するだろうけど、その労力に見合うリターンは得られるでしょう。
同様の効力をもつひみつ道具の“ノーリツチャッチャカ錠”が手軽に使える分、消耗品であることを考えると、繰り返し何度でも使える点もハッスルねじは優秀です。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ハッスルねじの優先度は星
つです。