「かぶると姿が見えなくなるマント」と聞いて、なにを思い浮かべるでしょうか。
なになに、『ハリー・ポッター』に登場する「死の秘宝」の“透明マント”だって? たしかにそれもだけど、我らがドラえもんの“とうめいマント”を忘れちゃいけません。
ドラえもんのとうめいマントは、覆われたものが目に見えなくなるマントです。
近年になって、電磁波の屈折率を変化させる「メタマテリアル」の研究が進み、とうめいマントはあながち実現不可能ともいえなくなってきました。
夢のある話のようだけど、実用化のあかつきに待っているのは、兵器や兵士を不可視にする軍事利用です。
とうめいマントが登場するエピソード「ご先祖さまがんばれ」でも、のび太のご先祖様にいくさで手柄を立てさせるために使われました。
視覚的に、つまり光学的に透明化する「光学迷彩」が象徴的な映画『プレデター』や漫画『攻殻機動隊』でも、当然のように兵器として扱われています。
とうめいマントのもっとも有用な使い道は、戦闘で敵から身を隠すことに間違いないでしょう。
ここ日本で一般的な生活を送っているならば、とうめいマントをもらっても真価を発揮する出番は(幸いにも)なさそうです。
平和な使い道では、野生動物の観察が挙げられます。しかし、匂いや音は消せないため、補佐的な使用にとどまるでしょう。
身近なところでは、自室で秘密にしたいものを隠したり、 収納の目隠しにして部屋の景観をすっきりさせたりするのに使えます。
姿を隠した状態だと、意図的に危害を加えられることがない代わりに、 偶発的な事故に巻き込まれる危険性が高まります。
なにせ向こうからはこちらが見えないから、調子に乗って歩き回ってると、車にはねられてしまうかもしれません。
そもそも、人目に付かないように身を隠す必要がある行動なんて、大概が悪事です。
人に見られることなく、監視カメラに映ることなく、窃盗などの犯罪ができます。
そればかりか、電車が駅に入ってきたタイミングでホームから人を突き落としたら……。監視カメラの映像が、かえって完全犯罪の手助けとなるでしょう。
対象物を秘匿するためのひみつ道具なので秘匿性は抜群です。
ただし留め具などがない一枚布だから、風に吹かれたり、引っかけるなどしてめくれてしまわないように注意しなくてはなりません。
不可視化の技術は、現実に研究が進み始めているので、ほかのひみつ道具ほど革新的ではありません。
それだけに、しかるべき研究機関にとうめいマントを提供すれば、仕組みの完全解析による量産化や大型化が見込めます。
しかし悪用される危険性が高いため、実用化されても、銃刀法に類する法律で規制されて、民間人はおいそれと手にできないでしょう。
革命的な変化がもたらされるのは軍事だけで、一般市民への影響は限定的にとどまると推定されます。
悪用以外の使い道が乏しいものの、普段から持ち歩いておくと、いざというときに役に立ちそうです。
でも、どうせなら“かくれマント”のほうが欲しい。かくれマントは、ハミ出た部分が見えてしまうとうめいマントの欠点を解消した姉妹品です。
完全に上位互換のひみつ道具であるかくれマントがある以上、あえてとうめいマントを選ぶ理由はありません。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、とうめいマントの優先度は星
つです。