「できたらうれしい、あんなことやこんなこと」を実現してくれるひみつ道具だけども、斜め上を行く機能のやつも少なくありません。
そういった意味では、誰しも一度くらいは妄想したかもしれない機能を実現する“かくれマント”は、隠れた正統派ひみつ道具といえるでしょう。
ドラえもんのかくれマントは、羽織ると姿が隠れて見えなくなるマントです。
類似品の“とうめいマント”とは効果の及ぶ範囲が異なります。マントに覆われている部分だけが透明になるとうめいマントとは違って、かくれマントはハミ出ている部分も見えなくなります。着衣など、身に着けている物すべてに効果が及びます。
効果の詳細は原作漫画に初登場したときの描写を元にしています。
いわゆる「透明人間」になることで都合のよくなることがあるとすれば、おおよそグレーないし真っ黒な行為でしょう。真っ当なことなら正々堂々と姿を見せてやれば済む話。人目が気になるのはやましい証拠です。
かくれマントのやましいところがない使い道は護身くらいです。姿が見えなければ襲われようがないから、女性が遅い時間に帰宅する日でも安心。かくれマントを羽織れば悪漢から身を守れます。
一人暮らしなら、自宅にいるときも常にかくれマントを羽織っておけば、侵入者が現れても容易に対処できます。一般人の危機管理としては大げさだけど、掛かるコストはマントを一枚羽織るだけなので、必要性はさておき実施して損はしません。
透明人間は誰からも気を使われません。当然、車も避けてくれないので、ぼんやりしてると交通事故に遭ってしまいます。
出先でかくれマントを装着したときは、周囲に細心の注意を払って行動するべきです。
不法侵入、窃盗、暴行、のぞき……。姿が見えなければ、あらゆる犯罪行為のハードルが下がります。
防犯カメラがあっても問題なし。むしろ防犯カメラに映る場所のほうが、犯行の不可能性を証明することになります。
「目に見えない存在による犯行」という馬鹿げたことを肯定しなければ整合性が取れないのだから、限りなく完全犯罪です。
そういった透明人間による犯罪行為を映画『インビジブル』は描いています。
映画『インビジブル』予告編
この映画を観ると透明人間のタチの悪さがよくわかるけど、服を着たまま透明になれるかくれマントは輪をかけてタチが悪いはず。裸足(はだし)というウイークポイントがあるかないかでは大違いです。
かくれマントで姿を隠しても、匂いや物音は消せません。敏感な人に気配を感じ取られてしまうこともあるはずです。
とはいえ目に見えない存在なんて心霊現象そのものだから、恐れをなして逃げ出すでしょう。そう簡単にはバレません。
もちろん、透明になる瞬間や、元に戻る瞬間を目撃されたら話は別です。街頭には思った以上に防犯カメラが設置されています。あまり調子に乗っていると、決定的な瞬間を録画されかねません。
秘匿性が高いにしろ最低限の注意は必要です。
かくれマントのように姿を隠す技術は「光学迷彩」と呼ばれており、映画『プレデター』やアニメ『攻殻機動隊』のシリーズでお馴染みです。
どちらの作品でも光学迷彩は戦闘を有利に運ぶために使われます。現実世界でも、光学迷彩は軍事利用を目的に研究されています。従ってかくれマントの存在が世にバレたら、接収されて解析が試みられるはずです。
その結果、光学迷彩が実用化されたなら、姿の見えない兵士や兵器が目覚ましい成果を上げることでしょう。その「成果」とは、物騒なことばかりだけれども。
かくれマントは兵器寄りで、悪用度が高いひみつ道具なのが気掛かりです。けれども透明になる機能は、ひみつ道具に代表される「夢のアイテム」の王道であり、理屈抜きに好奇心をそそります。
「もしも、ドラえもんのひみつ道具を一つだけもらえるとしたら」の答えとしては、割と悪くない選択肢かもしれないというわけで、かくれマントの優先度は星
つです。