しずかちゃんの飼っていたカナリアを野良猫のクロが食べてしまいました。クロはドラえもんのどら焼きを取って食べてしまうなど、前から悪さを繰り返しています。
ここらで一度ぎゃふんと言わせなくちゃ、とドラえもんが取り出したひみつ道具が“ゆうどうミサイル”です。
ドラえもんのゆうどうミサイルは、小さくて遅くて低威力の誘導弾です。
サイズは全長40cmくらい。速度は人の小走りくらい。
威力はというと、作中で標的となったネコは全身の毛が黒焦げになったものの、すぐによろよろと動けました。骨折や内臓破裂などの深刻な外傷は負いません。
使用するには、まず弾頭の目玉に標的を見せながら口頭で教え込みます。それから発射台にセットして、ライターなどで点火すると発射します。
ゆうどうミサイルは発射したが最後、標的に命中して爆発するか、燃料が切れるまで延々と追跡し続けます。
ドラえもんからもらえる弾数は10発とします。
たとえゆうどうミサイルがどれだけ低威力だとしても、ミサイルはミサイルです。武器の使用が正当化される局面なんて限られています。正当防衛に相当する場合くらいでしょう。
しかしゆうどうミサイルは瞬発力に欠けるため、護身には不向きです。よしんば加害者を爆破しても、無力化できずに逆上させるだけです。
残る用途はサバゲー(サバイバルゲーム)です。装備で安全性を確保してサバゲーで使ったら、大いに盛り上がること間違いなし。
とはいえサバゲーユーザーともなれば、ゆうどうミサイルの特異性を見過ごすはずがありません。
時を越えてもたらされた存在であることを明かせば、余計な面倒をしょい込むことになります。やっぱりどうにも使いようのないひみつ道具です。
作中でゆうどうミサイルは、ハチに刺されて顔が腫れたのび太をジャイアンだと取り違えました。ゆうどうミサイルの顔認識の精度はずいぶんお粗末です。
そのため狙った標的以外を爆破する恐れがあります。
命中した状況によっては被害がしゃれにならない大きさになることだってあり得ます。ゆうどうミサイルがまごうかたなき兵器であることを忘れてはいけません。
悪用もなにも、兵器に善の道なんてあるのでしょうか。大手を振って兵器を使う戦争ですら、敗戦国が責任を取らされます。「勝てば官軍、負ければ賊軍」とはよく言ったものです。
もくもくと黒煙を吐き出しながら、悠々と目視できるのろい速度で飛ぶゆうどうミサイルに秘匿性なんてありません。
画像認識にしても音声認識にしても、既存のスマホにも劣るのがゆうどうミサイルの実情です。それに威力も小さくて、弾数も限られています。
これをもって社会が変わることはないでしょう。
誰かを懲らしめたいとか、なにかを退治したいとか。そんなときにひみつ道具を使うとして、果たしてゆうどうミサイルが最善手でしょうか。
ミサイルで爆破するというのは、いささか短絡的に思えます。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ゆうどうミサイルの優先度は星
つです。