もしも「タイムマシン」をもらったら

ドラえもんが未来から時間を越えて現代へやって来た本を正せば、のび太の運命をよりよい方向へ導くためですのび太との生活を無為に日がな一日エンジョイしているだけでは――たとえそう見えたとしても――ありません。

ドラえもん』の根幹をなす、ことの始まりとなったひみつ道具が“タイムマシン”です。

機能と効果

ドラえもんのタイムマシンは、時間と空間を越えて移動する乗り物です。

時空間に存在してして、現空間(我々の暮らすこの空間)に現れることは通常ありません。時空間と現空間をつなぐタイムホールがタイムマシンの停止中に開くので、そこから乗り降りします。

過去へタイムトラベルする上で避けられない問題が、矛盾が生じて現代との整合性が取れなくなる、いわゆる「タイムパラドックス」です。

タイムトラベルを物語で扱う上でタイムパラドックスを解決する説は数々提唱されてきました。現在優勢な説は、過去へ到着した時点から世界が分岐するという「パラレルワールド説」です。

『ドラえもん』では、一つの世界が過去から現代にかけてすべて改変される「世界改変説」がベースです。ところがのび太がジャイ子と結婚しても、しずかちゃんと結婚してもセワシは生まれます。大局は変わりません。

セワシによると「ほかでつりあいとるから。歴史の流れが変わっても、けっきょくぼくは生まれてくるよ」(1)とのこと。

ただし『ドラえもん』におけるタイムパラドックスのルールは、エピソードによって異なります。改変が元から歴史に組み込まれていたり、改変された出来事を直ちに元へ戻そうとする「歴史の修正力」が働くこともあります。

(1)てんとう虫コミックス『ドラえもん』第1巻「未来の国からはるばると」より

航時法とタイムパトロール

『ドラえもん』の世界では、タイムマシンの使用は「航時法」で厳しく制限されており、「タイムパトロール」が取り締まっています当サイトでは便宜上、この航時法とタイムパトロールは考慮に入れていません。

この現代に未来からひみつ道具を届けることが航時法に抵触しているため、「もしもドラえもんのひみつ道具を一つだけもらえるなら」という前提が成り立たなくなってしまうからです。

有用性: ★★★★☆

人類誕生以前に絶滅した生物の生態調査や、正確な記録が残っていない歴史の確認など、学術的に大きな成果が上げられますただし生体サンプルを採取する必要がない場合は、“タイムテレビ”を使ったほうが安全かつ効率的でしょう。

自分の過去の過ちを是正して、今よりも自分にとって好ましい生活を手に入れる。現在の自分を否定することをいとわないなら、そんなことすら可能です。

未来を確認してSNSやネット掲示板などで「予言」を当て続ければ、次第に信憑性を得て人々を動かし、大きな災害や事故などから人々を守れるかもしれません。ジョン・タイター(2)を信じている人も少なくないのですから。

有用か否かをさておくなら、使い道は星の数ほどあります。

(2)ジョン・タイターとは、アメリカのネット掲示板で有名になった、自称「2036年からやってきたタイムトラベラー」です。書き込みは一定の説得力を持ち、一種の都市伝説に昇華しました。

危険性: ★★★★★

「バタフライ効果」と呼ばれる、「小さな蝶の羽ばたきが、遠く離れた場所の竜巻を引き起こす可能性もある」という考え方があります過去でとったほんの些細な行動が、巡り巡って大きな世界改変につながる可能性を誰が否定できるでしょうか。

バタフライ・エフェクト【日本語吹替版】 [VHS]
タイプ:
VHS
出演:
アシュトン・カッチャー
発売日:
2005年10月21日
発売元:
アートポート

差し迫る危険性は、移動先で開いたタイムホールから、誰かが勝手にタイムマシンへ乗りこんでしまって、元の時代へ戻れなくなること。ほかのひみつ道具がなければ、移動先の時代に置き去りにされると、もうなにも打つ手がありません。

未来はどうなっているか行くまでわからないし、過去はほぼ無法状態です。生きて帰れる保証はまるでないことを最低限覚悟しましょう。

悪用度: ★★★★★

自分の都合のいいように過去を変えると、その分どこかの誰かが割を食って世界のバランスが取られるわけです。これはとても身勝手なこと。

のび太の未来が明るくなった陰で、誰かが泣いているかもしれません。本来ならしずかちゃんと結婚するはずだった誰かの人生はどう変わったのでしょうか。

藤子・F・不二雄先生は、そのようなテーマで漫画『SF短編』シリーズの「あいつのタイムマシン」を描いています。

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 (3)
タイプ:
コミック
著:
藤子・F・ 不二雄
発売日:
2012年04月25日
発売元:
小学館

秘匿性: ★★☆☆☆

到着先でのタイムホールを使った乗り降りが目立ちます。また、起点となる自宅の机の引き出しを誰かに開けられてしまうこともあるでしょう。

タイムマシンは、世界への影響度が究極的に高い割には、秘匿性に問題のあるひみつ道具です。

革命度: ★★★★★

歴史を、世界を変えてしまうかもしれないのだから、革命度は文句なし。それだけに個人の手には余ります。

まとめ

有用で夢のあるひみつ道具なのは間違いないけれど、移動先での危険性や、世界改変の重圧が気掛かりです。アメコミ『スパイダーマン』の「大きな力には、大きな責任が伴う」という台詞が頭をよぎります。

同じタイムトラベル系ひみつ道具なら、直接干渉しないタイムテレビのほうが随分と気が楽です。

というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、タイムマシンの優先度は星2.5つです。

道具名称:
タイムマシン
原作初出:
『ドラえもん』第1巻「ご先祖さまがんばれ」
カテゴリ:
「た」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第1巻 / 人気 / 定番 / 時間
公開日:
2014年06月10日

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