タイムふろしき

時の流れは非情です。刻一刻と肉体は老い、やがて訪れる死を誰一人として避けられません。でも、“タイムマシン”で未来からやってきたドラえもんのひみつ道具があったら……。

若返り」という人類の夢をかなえられるひみつ道具、それが“タイムふろしき”です。

機能と効果

ドラえもんのタイムふろしきは、時間の流れを個別に操作する風呂敷です。

これでくるんだものは、そのあいだ時間が早戻り、もしくは早送りされます。

赤い面を外側にしてかぶせると時間が戻ります(新しくなる)。青い面を外側にしてかぶせると時間が進みます(古くなる)。

対象物の一部にかぶせるだけで全体に効果が及ぶ(1)ため、タイムふろしき(およそ1メートル四方)より大きなものにも使えます。

タイムふろしきでのび太を幼稚園時代の体へ戻したとき(第6巻「赤いくつの女の子」)、記憶や自我は元のままでした人間に使った場合、自己同一性が失われてしまわないように、効果の対象から脳を除外する安全装置が働くと推定されます。

(1)例外あり。効果の及ぶ範囲はまちまちです。

有用性: ★★★★★

タイムふろしきの基本的な使い道は、古びたり壊れたりしたものを新品に戻すことです「新品同様」じゃない、正真正銘の新品になるから、普通に修復するのとは取り戻せる品質が違います。

中古を買って新品にすれば、はなから新品を買うよりだんぜん経済的。捨て値で売っているジャンク品がお宝になります。

食品に使えば、消費・賞味期限をリセットできます。生鮮食品の時間を店頭に並ぶより前へ戻して、収穫直後の新鮮な状態で食べるなんてことも。通常なら農家や漁師でなければ味わえない贅沢です。

もちろん時間を早送りするほうも有用です。さまざまな待ち時間をスキップし放題。カップ麺の3分どころか、1年を超える熟成期間が必要な果実酒だって一瞬で出来上がります。

ほかにも、接着剤や塗料の乾燥時間をスキップするなど、時間の早送りで能率が劇的にアップする作業は挙げていけばきりがありません。

そしてタイムふろしきの究極の活用方法は、いわずもがな若返りです。若く、活力に満ちた肉体を誰よりも維持できます病気やケガも治せるので、即死以外では死にません

ただし「脳の時間は変化しない」と推測されるため、不老不死は実現できないでしょう脳の時間を戻せたとしても、その期間の記憶を失ってしまうので、人生を積み重ねられません。どちらにせよ、完璧な不老不死にはなれないわけです。

脳の寿命は、およそ120年から200年(2)だと考えられています。長寿大国の日本でも、享年80を過ぎれば大往生だといわれるのだから、それでも十分すぎるくらいでしょう。

(2)諸説あり。

危険性: ★★★☆☆

タイムふろしきでスマホやPCを新品に戻すと、記憶メディアのデータも早戻しされて消失します。

その状態から時間を早送りすると、「新たな時の流れが始まってデータは消失したまま」なのか、「元の時の流れに沿ってデータが復旧する」のか、はたしてどちらでしょう。

タイムふろしきに「歴史の修正力」が働く様子は原作にありません。このことから、時間の流れはリセットされる、つまり「データは消失したまま」だと考えられます。

大事なデータをうっかり消してしまう危険性があるので、データが保存されている機器を新しくするときは、バックアップを忘れてはいけません。

また、タイムふろしきは効果の発生条件が不安定です。

野比家の庭の木に掛けておいたときは変化が一切見られなかったのに、風で吹き飛ばされて桜の木に掛かかると今度は効果が生じて花が満開になりました。

タイムふろしきをマントのように羽織ったジャイアンは、露出していた頭部も含めて肉体のすべてが若返ったのに、頭に掛かった老人は髪がふさふさに、つまり頭皮だけが若返りました。

「タイムふろしきなら使いこなせる」と思いあがっちゃいけません。

悪用度: ★★★★☆

人にタイムふろしきをかぶせて、極限まで時間を戻したり進めたりしたら……。

その肉体は、受精卵まで戻るか、細胞の寿命を終えて朽ち果てるかして、やがて消滅します「脳の時間は変化しない」という仮定が正しかったなら、「脳だけになる」という更におぞましい結果になります。

建築物を老朽化させたり、コンクリートを固まる前へ戻せば、崩壊させることすら可能でしょう。

時の流れに逆らえるものは(知られている限り)この世に存在しませんタイムふろしきを手に入れることは、この世を統べる力の一部を手に入れることに他ならないのです。

あらゆる存在の寿命を操る力。それが神の力なのか、悪魔の力なのかは使い手しだいです。

秘匿性: ★★★★☆

いつまでも若い肉体を維持すると、噂になるのは避けられません。隠遁生活を送ったとしても、 異常な長寿が戸籍上で確認され次第、なんらかの詐称を疑われて調査が入るでしょう 余程の権力者でもなければ、不老は秘匿できません。

不老以外の用途なら、使っている最中に直接目撃されない限り、タイムふろしきの秘匿性は守られます。

革命度: ★★★★★

時間の早送りで、畜産を含む農業のサイクルを劇的に短縮できます。昨今警鐘が鳴らされている食糧不足の解消につながります。

芸術の分野にも革命が起こります。名画の時間を描かれた当初まで戻せば、発色を取り戻して本来の姿へ蘇るのですただし、年代測定が無意味になるので、贋作が横行するきっかけになるかもしれないのが痛し痒しです。

経過時間が必要な実験を早送りして効率的に行ったり、遺物の時間を戻して人類の足跡をたどったり、恐竜の卵の化石を蘇らせて孵化させたり(第10巻「のび太の恐竜」)……タイムふろしきは、あらゆる学術の発展に寄与することでしょう。

もしも「脳の時間は変えられない」という仮定が間違っていたなら、「死者の復活」すら実現します。もちろんそれは人が越えてはならない一線です。

まとめ

のび太たちがなにかと使うだけあって、タイムふろしきは応用範囲が広いから、それだけ夢も広がるひみつ道具です。

私欲のためにこっそり使うのもよし。世のため人のため、社会に譲渡するのもよし。もらって損することはないでしょう。

というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、タイムふろしきの優先度は星4.5当ブログ的「欲しいひみつ道具ランキング」にランクインです。

この記事の「ゆっくり解説」版

道具名称:
タイムふろしき
原作初出:
コミックス第2巻「タイムふろしき」
カテゴリ:
「た」から始まるもの / コミックス第2巻 / 人気 / 修復 / 定番 / 時間
公開日:
2014年09月15日
更新日:
2022年11月06日

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