漫画『ドラえもん』は、大人になってから読み返しても面白くって感服します。それはさておき、『ドラえもん』は基本的には児童向けですから、ひみつ道具は子供が喜びそうなラインアップです。
でも中には、「古道具の売買や交換」という子供の興味が薄そうな目的に使う“タイムシーバー”みたいなひみつ道具もあったりします。そこは藤子・F・不二雄先生ですから、一ひねりあって……。
タイムシーバーは、22世紀の古道具屋「ちん品堂」と取引するための通信機器です。ちん品堂は、古道具の売買や交換を手掛けており、取引が成立すると品物が時空を超えて転送されます。取引は、ちん品堂のスタッフと口頭で行います。
売買価格はドラえもんによると「高い」とのこと。タイムシーバーが登場するエピソード「古道具きょう争」では、交換のみの使用だったため、相場は不明です。
交換は同じ種類の品物になります。時計なら時計、ラジオならラジオの古道具が転送されます。特に価値のある骨董品でなくても交換対象になるようです。
ちん品堂は22世紀に店を構えているため、私たちにとっては未来の品物にあたる古道具も取り扱っています。
まず単純に、骨董品が趣味の人にとっては、タイムシーバーはたまらなく魅力的なはず。「古道具きょう争」を読む限り、取引は随分と融通が利くようなので、交渉しだいでは思わぬお宝をゲットできそうです。
価値基準は22世紀に置かれているため、現代との相場の違いを利用して、より高価な品物に交換することも可能でしょう。骨董品の知識があれば、ネットオークションを併用して、小遣い稼ぎになります。
骨董品にまるで興味がない場合、いらなくなった品物を高く売る……とはいかなそうです。支払いはおそらく未来の貨幣になるため、それを更に現代の貨幣に交換しなければならないので、結局目減りしてしまって、大した額にはならないだろうから。
もっとも有用であろう使い方は、未来の品物を手に入れることです。ドラえもんは2123年からやってきました。つまり10年落ちの旧型でも、私たちにとっては100年近く未来の品物になります。
日進月歩の電化製品などは、現代では考えられない性能に達していることでしょう。それらが手に入るなんて、わくわくします。
のび太が「まかせるから、ジャンジャンとりかえてよ」と依頼すると、身の回りのものが(家まで!)次々と際限なく古いものへ変わってしまいました。
ちん品堂のスタッフは素直で大胆な性格のようなので、注文は慎重にしないと面倒なことになってしまうようです。その点に注意すれば、特に危険性はないでしょう。
タイムシーバーの使用には、ちん品堂のスタッフが介在しているため、身勝手なことはできないでしょう。
入手経由が疑われる特殊な品物を手に入れて人に見せたり、品物が転送される瞬間を目撃されたりすると、タイムシーバーの存在がバレる可能性がぐんと高まります。それらに気を付けて運用すれば秘密は守られるでしょう。
しかしそれは現代の話。ちん品堂を介しているので、未来にはバレバレです。
本来ならちん品堂経由でタイムパトロールに知られて、タイムシーバーの使用が制限されてしまうはずですが、当サイトでは「タイムパトロールには干渉されない」というルールのため、秘匿性には支障をきたさないとします。
未来のテクノロジーを使った品物が手に入る。しかも、ひみつ道具のように荒唐無稽の品物ではなく、家電製品などだから、使われているテクノロジーを解析できる可能性がとても高い。革命的な技術進歩を遂げる足掛かりになります。
某映画(ネタバレになるのでタイトルは伏せます)でそのようなエピソードがありました。そこでは未来のテクノロジーは秘匿され、軍事利用されて人類滅亡への引き金になってしまいます。
フィクションの世界では「まずは軍事利用」が定番の展開ですけれど、実際にはどうなるんでしょうね。「段階を踏まない進歩は、望ましい結果を生まない」という予感はたしかにしますけど。
個人での骨董品収集にとどめた場合は、この限りではありません。
「古道具きょう争」では、タイムシーバーを使ってすったもんだした末に野比家は未来の品物に囲まれました。逆の結果になるという一ひねりあるオチです。やっぱり子供は新しいものが好きですものね。
タイムシーバーは、古道具の売買や交換をするひみつ道具なのに未来の品物も手に入る。骨董品が好きでも、最新家電が好きでも、物欲が満たせるということで、優先度は星
つです。