愛犬のペロが死んでしまって嘆き悲しむしずかちゃんに、のび太はペロを生き返らせると約束しました。ドラえもんならなんとかしてくれると安請け合いしたのです。
さすがのドラえもんもこれには困ったものの、最後には奥の手を思いつきます。ペロがまだ生きていた昨日へ“タイムマシン”で戻って、薬を飲ませたのです。そのときの薬が“どんな病気にもきくくすり”です。
どんな病気にもきくくすりは、『ドラえもん最新ひみつ道具大辞典』では“万病薬”と表記されています。
しかし、原作エピソード「ペロ! 生きかえって」では万病薬とは一度も呼ばれていません。よって当サイトでは、道具名を“どんな病気にもきくくすり”とします。
ちなみに漫画『ドラえもん』にひみつ道具が登場するときは、道具名がカギ括弧でくくられています。どんな病気にもきくくすりは例外的にくくられていないので、本来の名前ではないのかもしれません。
どんな病気にもきくくすりは、その名のとおりどんな病気にも効能効果がある内服薬です。これを服用すると、およそ半日であらゆる病気が完治します。
原作で「病気」の定義は明示されません。外用薬でないことから、この項では外傷に対する直接的な効能効果はないものとします。
ドラえもんはどんな病気にもきくくすりについて、「いっとくけど、くすりはきかないこともあるんだよ」(1)と釘(くぎ)を刺しました。正式に承認されている医薬品でも効かない例外があるように、どんな病気にもきくくすもまた完璧ではないようです。
原作の絵で4錠入りなのがはっきりと見て取れるので、4錠もらえるものとします。また、1回1錠とします。
(1)てんとう虫コミックス『ドラえもん』第3巻「ペロ! 生きかえって」より
何事も命には代えられません。現代の医学では救えない命が助かる可能性があるのだから、どんな病気にもきくくすりの有用性は計り知れません。
命に別状がなくても、意識はあるが体を一切動かせない「閉じ込め症候群」など、一刻も早い回復が望まれるケースでも絶大な恩恵があります。
前述したように効かないことがあるとしても、可能性が「ない」と「ある」のあいだには越えられない壁があります。これしきでどんな病気にもきくくすりの有用性は揺るがないでしょう。
劇中で副作用については一切語られません。未来の世界で普通に売られている薬ですから、副作用の危険性は一般用医薬品と同程度だと思われます。
特別な副作用がなく、病気から人を救うひみつ道具に悪用など考えられません。
どんな病気にもきくくすりが必要となるほどの病気なら、すでに病院にかかっていて、病状が周囲に知られていることでしょう。そこで、現代の常識では治らないはずの病気が一日足らずで完治したとなれば、注目を集めてしまいます。
しかし、そんな奇跡がときとして起こるのが生命の不思議です。騒ぎになったとしても、やがては「ありふれた奇跡」として収束するでしょう。
どんな病気でも完治させる内服薬はもちろん革命的です。しかし70億を超える世界人口に対してたったの4錠では誤差にすらなりません。
もしも成分(ナノマシンかもしれませんが)が解析されて量産化されたらどうなるでしょう。技術の進歩の足並みがそろわずに医療だけが先行してしまうと、いたずらに人口だけが増えた末に地球のバランスが崩壊するおそれがあります。
もらった人がその4錠を使うだけなら、世界への影響はほとんどないでしょう。
どんな病気にもきくくすりよりも実用性や娯楽性に長けたひみつ道具はいくらでもあります。けれどもすべては命あっての物種です。目先の楽しさよりも、将来長きにわたる命の保証を取るのは、退屈だけど賢明な選択でしょう。
もらえるのはたったの4錠ですが、自分と、大切な人を守るには十分な量です。むしろ一個人の身の丈に合った量とさえいえます。
問題は交通事故などで即死してしまうと意味がないこと。これだけでは万全を期するには足りないことを忘れてはなりません。
また、7回分の特効薬が出せる上に健康診断も行える“お医者さんカバン”もあります。治せる病気の種類はどんな病気にもきくくすりのほうが多いと推定されるものの、比較対象として検討するべきでしょう。
さらにいうなら、もっと応用が利く“もしもボックス”のような強力なひみつ道具という選択肢もあります。
以上のことを踏まえて、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、どんな病気にもきくくすりの優先度は星
つです。