ひみつ道具ほど種類が膨大な数に上ると、使い道がかぶるものが出てきます。“マジック・セメント”もその一つ。修復に使えるひみつ道具が複数ある中で、あえて選ぶ価値が果たしてあるのでしょうか。
ドラえもんのマジック・セメントは、割れたり折れたりして壊れた箇所を、あたかも魔法のように元どおりに接合できる接着剤です。
例えば原作エピソード「うそつきかがみ」において粉々に割れた鏡をマジック・セメントで修復したときは、割れた個所がまったくわからない、ヒビ一つない状態に仕上がりました。
「うそつきかがみ」の時系列からすると、硬化時間は1分以内と思われます。
通常の接着剤で接合すると、必ず跡が残ります。鏡の場合、その箇所で光が屈折してしまって使い物になりません。このように、ただ接合するだけでは用を成さない品でも修復できる優れものです。
しかし、光を当てるだけで簡単に修復できる“復元光線”と比べると、ちまちま接合していくマジック・セメントは手間が掛かる分だけ見劣りします。更にこちらは消耗品なのも不利です。
復元光線ではなく、あえてマジック・セメントを選ぶ理由は見つかりません。
未知の成分なので、気化したものを吸い込んでしまった場合の健康被害も未知数です。使用に際しては十分に換気するべきでしょう。
ひみつ道具といっても、接着剤は接着剤です。特別な悪用は考えられません。
人前で自慢げに使って見せでもしない限り、存在がバレることはないでしょう。
継ぎ目がわからなくなるほど完璧に接合できる効果は、美術品修復の現場で特別重宝されるでしょう。しかし、マジック・セメントは消耗品なので、修復できる品数は高が知れています。
1本分では、美術品修復に限らずほかの分野においても、革命的といえるほどの変化は生まないでしょう。
マジック・セメントの効果は魅力的だけど、復元光線にあらゆる面で見劣りします。更には“タイムふろしき”というチート級のひみつ道具まで控えているとなると……。
ひみつ道具を一つだけもらえるとして、復元光線やタイムふろしきの存在を知らずにマジック・セメントを選んでしまったら、いずれ己の愚かさに頭をかきむしる羽目になるでしょう。
というわけで、マジック・セメントの優先度は星
つです。