「ひみつ道具を手にした登場人物が調子に乗って痛い目にあう」という展開は『ドラえもん』の定番です。ひみつ道具は安全性を度外視したとんでもないものばかりだからそれも当然。その大雑把さが魅力の一つだったりします。
けれども我々の暮らすこの世界は、次の日には何事もなかったかのようにいつもの日常へ戻るギャク漫画のようにはいきません。実際にひみつ道具を一つだけもらうとしたら、想定外の出来事が(多分)起こらない“復元光線”なんどうでしょうか。
ドラえもんの復元光線は、壊れたものを元どおりに復元する光線を出すライトです。
壊れたものを瞬時に、また手軽に直せるのは文句なしに便利です。日用品として活躍する出番は多いでしょう。
同じように修復に使える“タイムふろしき”と違って、復元光線は時間を操作しません。時を経た味わいに価値があるアンティークや、自分で使いこんで愛着の湧いたものも、経年変化をそのままに修復できるのが復元光線の美点でしょう。
ジャンク品を修復して販売したり、修理を請け負ったりすれば商売できます。ただし失ったパーツは戻らないようなので、完品に限るのが欠点です。そのため手狭い商売になりそうですが、脱サラに価値を見いだせるならありかもしれません。
復元するだけのひみつ道具だから、安全性は折り紙付きです。
シュレッダーにかけられた機密文書を復元して情報を盗めます。ただし本当に価値のある情報は、シュレッダーにかけられた文書でさえ手に入れることは困難を極めるので、復元光線を悪用できる場面に一般人が遭遇することはまずないでしょう。
身近な所持品の修復に使うだけなら、復元光線の存在を世に知られてしまう心配はなさそうです。商用利用する場合は、慎重に運用しないとバレてしまうかもしれません。
恐竜の化石は、長年にわたって間違った姿勢に復元されていました。元の形が分からないものを正しく復元するためには、膨大な調査が必要です。復元光線を使えば、調査研究することなく一足飛びに正しい形が分かります。古代の生物や遺跡に関する革命的な発見につながるかもしれません。
ただ、タイムふろしきとは違って、世の理(ことわり)を変えてしまうまでの革命的な力はありません。
ややもすれば事件事故を巻き起こしかねないのがひみつ道具の怖いところ。その点で復元光線は、堅実に使える安心感が魅力です。面白味には欠けるものの、単純に便利。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、復元光線の優先度は星
つです。