占いは信じていなくても、運の存在は信じて(感じて)いる人は多いはず。運は、手を抜いて運任せにしたときより、むしろ力を尽くしたときこそ気になるものです。なので一流のスポーツ選手ですら、ゲンを担ぐことは珍しくありません。
もしも、運を自在に操れたら……。そんな都合のいい願望を実現するひみつ道具が“かならずあたる手相セット”です。
ドラえもんのかならずあたる手相セットは、手相を書き替えて運勢を操るひみつ道具です。クリームと手相カタログと筆の3点がセットになっています。
現在の手相をクリームで塗りつぶして、手相カタログから選んだ好みの線を書き入れると、それらの線が示す運勢が必ず当たります。線は一つだけではなく、複数の線を組み合わせても効果が出ます。
手相カタログに掲載されている線は大きく分けて、一度だけ即座に効果が出るタイプ(ドラえもんによると効果をテストする実験用)と、即効性がない代わりに長期にわたって効果が見込めるタイプがあるようです。
セットの筆で書き入れた手相の見た目は、一般的な墨で書いたものと同様です。しかし、水などでは洗い落とせず、セットのクリームを使う以外に消す方法はありません。
「人事を尽くして天命を待つ」ということわざがあります。「ベストを尽くしたら、あとはもうあたふたせずに潔くありなさい」と、「最後は天が決めるのだから」という諦観の境地を説いているようです。
努力は報われることもあれば、不運で水泡に帰することもあります。「努力は必ず報われる」という努力至上主義に陥ると、天命に翻弄されて自分を人生の袋小路に追い詰めかねません。
持って生まれた才能や環境はかならずあたる手相セットをもってしても変えられない運命です。けれども、これから待ち受ける天命を好転させることはできるのです。
かならずあたる手相セットで運を味方につければ、ベストを尽くすことの価値が劇的に向上します。自分を信じることがたやすくなって、人生が生きやすくなるでしょう。有用というほかありません。
不慮の事故を避けられるだけでも、かならずあたる手相セットは十分すぎるくらい有用です。
手相カタログには悪運を招く線も掲載されています。のび太はそれらをうっかり書き入れてしまったばかりに、ひどい目に遭いました。
とはいえ、線が示す運勢は手相カタログに明記されているので、余程のおっちょこちょいでなければ、間違えて書き入れてしまうことはないはず。取り立てて危険というほどではないでしょう。
人の手相を悪運の相に書き換えれば、不幸を見舞わせられます。
ただ、かならずあたる手相セットの仕組み上、相手に気付かれずに実行するのはほぼ不可能です。相手をいいくるめて書き換えてしまえば、手相と不幸の因果関係は証明できないけれど、怪しまれることは避けられないでしょう。
極めて悪質な使いかたができるものの、その秘匿性の低さから悪用には向きません。
いい大人が手の平に墨でなにかを書き入れていたら、目立つだけではなく、理由を問いただされるでしょう。
その場合、「良い運勢の手相を書いてあるんだ」とはっきり言ってしまうほうが、かえって怪しまれないはず。筆記具で手相を書き入れるのは、占い好きには知られている開運術ですから。
ただ、かならずあたる手相セットの手相カタログに掲載されている手相は、象形文字のような形をしていて、一般的に知られているものとはまるで違います。なにやら変な宗教にハマったと噂されるかもしれません。
このように目立ちはするけれど、それが現代の常識を超越したひみつ道具だとバレるとは考え難いです。
しかし職種によっては、手相を書き入れたまま仕事をすることが許されない問題が立ちはだかります。かならずあたる手相セットの目立ち具合は、ひみつ道具だとバレないにしろ結構な欠点です。
「人事を尽くして天命を待つ」における天命とは、人の力ではどうにもならない事柄の象徴です。その天命を操ろうというのだから、神をも恐れぬ仕業です。
かならずあたる手相セットが直ちに世界を変えることはないけれど、宇宙の理(ことわり)に手を掛けるのだから、革命的というほかありません。
運を味方につけられたなら、あらゆる局面が有利に展開します。不運から逃れられるだけだって御の字です。手の平に墨で線を書き入れる見た目の間抜けさは、それと引き換えに手に入る幸運を考えれば、さしたる問題ではありません。
とうわけで、かならずあたる手相セットの優先度は星ドラえもんのひみつ道具で欲しいものランキング入りです。
つ。当サイト的