「すけすけ」とは、物が、特に衣服の布地が透けている状態を表す言葉です。そんな言葉ですから、検索するとちょっとエッチな話題ばかりがヒットします。ドラえもんのひみつ道具にも、“スケスケ望遠鏡”なんてのがありまして……。
「スケスケ望遠鏡」という名称は『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』より。作中では「この望遠鏡」としか呼ばれず、名称が明かされません。
ドラえもんのスケスケ望遠鏡は、透視と集音の機能を備えた望遠鏡です。
本体横のつまみを回して倍率を上げていくと、遠方を拡大して見られるばかりか、ピントが合っている距離より手前にある遮蔽物がすべて透けて見えます。
そのうえ、接眼レンズ(アイピース)に耳を当てると、レンズに映っている場所の音が聞こえます。
透視について考えると「暗所はどう見えるのか」という疑問に突き当たります。光が入らないよう密閉した箱を透視した場合、果たして中身は見えるのでしょうか。透視能力を持っていると自称する人が、箱の中身を当てたりしていますが……。
スケスケ望遠鏡に関しては、作中で透視したときに押入れの中はかなり暗く描かれており、またタンスの裏は背景が真っ暗に描かれていたことから、光学式であると推定されます。
よって密閉された箱の中などの光がない箇所は、スケスケ望遠鏡で透視しても真っ暗にしか見えないものとします。
都会では望遠鏡をのぞいても建物が邪魔してろくに見通せないけれど、スケスケ望遠鏡ならそんなのお構いなしに景観を楽しめます。
しかし、透視は犯罪と紙一重。居住地で誰のプライバシーも侵害することなくスケスケ望遠鏡を使うのは難しいので、手放しで有用とはいえません。
居住地でなければ問題なし。深い森林でも木々を透かして動植物を観察できます。向こうからは見えないから、警戒心の強い動物を観察するのに打って付けです。
押入れの奥にしまってある物を透視して確認するという日常的な使い道もあります。あまりにぎちぎちな収納だと、奥まで光が届かなくて確認できないのが難点です。
地震などで倒壊した建築物のがれきに埋まってしまった人の捜索に使えば、命を救えるかもしれません。たとえ外から光が届かなくても、生存者がスマホなどでライトをつけていれば発見できます。
無論、救助しなくては元も子もありません。生存者の存在を証明するために、スケスケ望遠鏡の存在を救助隊に明かすことになるでしょう。ひみつ道具の存在は秘密にしたいところですが、人命には代えられません。
集音機能はいわば盗聴なので、有用とするのは差し障りがあります。
遮蔽物の向こうがどうなっているかは透視するまでわからないので、強い光を予期せず見てしまう危険性があります。とはいえ、太陽光は事前に位置を把握して避けられるので、目にダメージを受けるほどの光をのぞいてしまうことはないでしょう。
透視はのぞきですし、集音は盗聴です。スケスケ望遠鏡は、悪用ありきのひみつ道具といっても過言ではありません。
透視と聞くと男子なら「女子の服を透かして裸を……」と考えるかもしれません。しかしスケスケ望遠鏡の仕組上、着衣だけを透視するのは難しいはず。衣服の布地が透ける言葉どおりの「すけすけ」にはならないでしょう。
ともあれお風呂や更衣室などをのぞけるので、よからぬ目的に使えることに変わりはありません。
そればかりか、あらゆるプライバシーも企業秘密もスケスケ望遠鏡の前では丸裸です。使い方しだいでは莫大な利益を不当に上げられるでしょう。
スケスケ望遠鏡によるのぞきと盗聴は完全犯罪です。スケスケ望遠鏡の存在さえ隠しとおせば、犯行を証明されることは決してありません。
スケスケ望遠鏡でどれだけ透視しても集音しても、相手側には一切伝わりません。使っている姿を人に見られさえしなければ、完璧な秘匿性を保てます。
作中でのび太とドラえもんがスケスケ望遠鏡を使うときにわざわざ屋根に出ていましたが、もちろんそんな必要はありません。壁を透視できるのだから、部屋の中で使えばいいのです。そうすれば人に見られずに済みます。
人から見られないプライベートな空間は、公衆トイレの個室など、外出先でも確保できます。スケスケ望遠鏡の倍率では足りないほど自宅から離れた場所を透視する場合でも、秘匿性を保ったまま使うのは難しいことではないでしょう。
時間と空間を越えて監視できる“タイムテレビ”には及ばないにしても、スケスケ望遠鏡は世の中の秘密をかなり暴けます。使う人が使えば、社会を動かすことすらできるかもしれません。
スケスケ望遠鏡は、使い道がいろいろあれど、結局「人のプライベートをのぞき見るのが一番楽しい!」なんて心境になりかねない危うさのあるひみつ道具です。ドラえもんがくれるというならもらうけど、自分から積極的に選ぶ気にはなれません。
というわけで、もしもひみつ道具を一つもらえるなら、スケスケ望遠鏡の優先度は星
つです。