ジャイアンの悪口を落書きした本を、のび太はよりによってジャイアンその人にうっかり貸してしまいました。
そこでのび太はジャイアンが悪口を見る前に、“とう明人間目ぐすり”で透明人間になって本を奪取しようと思いつきました。
そんな面倒なことをしなくても、“とりよせバッグ”ならサクッと取り返せる……なんて話はさておき、のび太におねだりされたときに師走でばたばたしていて上の空だったドラえもんが、勘違いして貸したひみつ道具が“見えなくなる目ぐすり”です。
ドラえもんの見えなくなる目ぐすりは、人の姿(1)が見えなくなる目薬です。
この目薬をさした人は、人間とその着衣をつねに透視するようになって、目で見てとれなくなります。例外として自分自身は普通に見えます。
効果の持続時間は不明。当サイトでは、持続時間を1時間と仮定します。
(1)原作版の設定。2017年4月21日に放送されたアニメ版(第2作第2期)では、動物の姿も見えなくなると改変されました。
見えなくなる目ぐすりは、いったいなにを目的とするのかよくわからない、なんともひみつ道具らしい珍品です。
混雑している展覧会で使って、人垣を透視して作品を鑑賞する? でも人がいなくなるわけではないから、近くで観るには結局人をよけなくてはなりません。人にぶつかりまくる迷惑者になるだけでしょう。
なら映画館で映画を観るときに使って貸し切り気分を味わう? 指定席に座って鑑賞するあいだは人をよけなくて済みます。でも姿が消えても話し声や飲食の物音は残ったままなので気休めにしかなりません。
では「人っ子一人いない繁華街」という非日常を楽しむ? 渋谷のスタバTSUTAYA店で誰もいないスクランブル交差点を眼下に眺めながら飲むフラペチーノは一味違うかもしれません。でも手荷物や車は見えるのがなんとも中途半端な感じです。
どうにもこうにも見えなくなる目ぐすりを有意義に活用するのは難しいでしょう。
見えなくなる目ぐすりの効果中は人をよけるのが難しくなります。そして人にぶつかるのはトラブルの元です。
些細なことが発端で暴行・傷害事件になるのはよくある話。被害を受けるだけではなく、ぶつかったお年寄りがころんで怪我を負わせてしまい加害者になるケースも考えられます。
誰かの目薬の中身を見えなくなる目ぐすりに入れ替えれば、そうとは知らずに使った人はなにが起こっているのかまったく理解できずにパニックに陥るでしょう。
ただし目薬をさした直後に視覚が異常をきたせば、その目薬が原因だと大抵の人は思うはずです。因果関係があからさま過ぎて悪用には向いていません。
人の視覚は本人しか知覚できません。見えなくなる目ぐすりを使っていることを第三者が知る由もありません。
もちろん前項のように人に使わせた場合は例外です。
用途がよくわからない上に、消耗品で使える回数が限られている見えなくなる目ぐすりがたった一つあっても、世界はなにも変わらないでしょう。
見えなくなる目ぐすりの効果中に歩き回ったのび太は散々な目に遭いました。それはなにもとう明人間目ぐすりだと勘違いしたせいばかりではないでしょう。見えなくなる目ぐすりを使えばどのみち同じ道をたどったように思えます。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、見えなくなる目ぐすりの優先度は星
つです。