『ミッション:インポッシブル』や『007』シリーズに登場するスパイ道具は、ギミック感が満載で男の子の心をくすぐります。そんなツボを押さえるべく、『ドラえもん』にもその名もずばり“スパイセット”なるひみつ道具が登場するのだけど……。
ドラえもんのスパイセットは、偵察用ひみつ道具です。頭上のツノを押し込むと目と耳のパーツが分離して、指令した対象まで飛んでいきます。目と耳が撮影した映像と音声は、口を開くと現れるモニターに映しだされます。
スパイセットが登場する原作エピソード「スパイ大作戦」では、偵察対象のスネ夫をかなりの近距離で撮影していました。このことから、ズーム機能は搭載していないことがうかがい知れます。
音もなく忍び寄って偵察する、という機能自体は有用です。問題は、見てのとおりカメラが目を模していること。人も含め動物は、目にとても敏感です。これでは目立ってしょうがない。音もなく忍び寄る意味がありません。
カラスよけに目玉模様が使われるくらいですから、野生動物の観察目的にも支障があるでしょう。
目と耳を“透明ペンキ”で見えなくすれば、偵察用途としてまともに機能させられるけれど、当サイトは「ひみつ道具を一つだけもらえたら」がテーマなので、組み合わせての使用は参考外です。
残念ながら偵察用途としては、“タイムテレビ”にあらゆる面で劣ります。
単純に、飛行して追跡するビデオカメラとしてなら使えるかというと、録画できない難点があります。外部出力が付いてないのです。画質を度外視するなら、別のビデオカメラでスパイセットのモニターを撮影する泥臭い方法で一応記録できます。
一番の有効利用は、人が立ち入ることのできない危険区域などの状況確認でしょう。
スパイセットを使うことで、身に危険が及ぶことは(直接的には)ないように思えます。
スパイ活動は、非合法もしくは超法規である場合がほとんどで、善行だと胸を張ることのできない行いです。スパイセットは、ひみつ道具としては珍しく、悪用が前提だといえるでしょう。
だからこそ、本格的な偵察には使えない作り、すなわちズーム機能の非搭載かつ目立つ外見、になっているのかもしれません。
こんなものが低空を飛んでいたら、目を引いて仕方がありません。
今や小型ビデオカメラを搭載したドローンが当たり前のように販売されている時代になりました。スパイセットの優位性は飛行音がしないことくらいです。
ただし、スパイセットの飛行動作は反重力だと思われるので、仕組みを解析できれば、それはもちろん革命的なことです。
スパイ道具といえば、超小型だったり、超多機能だったり、超高性能だったりするのが少年の心をくすぐるわけで、そのどれも満たしていないスパイセットは名前負けと言わざるを得ません。
愛嬌のあるデザインは優秀だけれど、決め手にまではなりません。というわけで、 もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、スパイセットの優先度は星
つです。