『ドラえもん』には、結構あぶないひみつ道具がしれっと登場します。子供だって人畜無害なものよりも、刺激のある不謹慎なものが好きだから、それも必然でしょう。藤子・F・不二雄先生は、その辺りのバランス感覚が絶妙だなと感心します。
第1巻に登場する“コベアベ”は、そんな不謹慎なひみつ道具の一つです。
コベアベの機能は、ドラえもんによると「これから出る音波で神経のはたらきをかえて、頭で考えてることと、あべこべのことをやらせるんだ」とのこと。横笛の形をしていて、吹くことにより音波がでます。
冷静に考えると、とんでもない機能です。人の精神をあやつるなんて!これをのび太にウインクしながら笑顔で説明するんだから、ドラえもんってなにげに黒い。
コベアベが登場するエピソード「コベアベ」では、部屋の片づけを嫌がるのび太にコベアベを使って片づけをやらせました。影響を受けた対象の行動が善行だとしても、本人の意思に反している限り、有用といえるかは疑問です。
その後にのび太は、しずかちゃんの家に押し入った強盗をコベアベで自首させました。悪行を止めるには、とても有用でしょう。
ただし、自由にあやつれるわけではないので、不確定要素が多すぎて、有効利用は難しそうです。
人がなにを考えているかを見た目ですべて推し量ることはできません。無闇にコベアベを吹くと、死者が出る可能性も大いに考えられます。
音を聞いた人すべてに影響が出るため、人込みでコベアベを吹くと世にも恐ろしい結果を招くことになるでしょう。
そもそも「本人の意思に反した行動を無理やりとらせる」という機能が善行とは程遠いので、コベアベを使うことは、イコール悪用だといえるでしょう。
具体的内容を書くのもはばかれるくらいのおぞましい悪行につながる、世にも恐ろしいひみつ道具です。
コベアベを使われている人は、自分の意思に反していることを自覚できる場合と、できない場合があるようです。どちらにせよ、音が鳴り止むと我に返って、自分の行動を思い返せるようなので、秘匿性は低いといえるでしょう。
コベアベの存在と機能がバレたなら、その危険性ゆえに、没収は免れません。
コベアベは、音波を聴かせている間だけしか効果が持続しないので、個人の使用範囲では世界の在り方を変えるまでには至らなそうです。
元より影響力のある組織の手に渡ったなら話は別。万が一コベアベの仕組みが解明されて、効果の持続と量産が可能になったなら、それを使わない行政機関などこの世にあるでしょうか。ろくなことにならないのが目に見えます。
自分にコベアベが使われることを想像すると、身の毛がよだちます。また、使いたくもありません。コベアベは、この世にあってはいけないひみつ道具でしょう。ということで、優先度は星
つです。