もしも「とうめいペンキ」をもらったら

なにか物を透明にする。それはファンタジーにしろSFにしろ、「すこしふしぎ」な物語では定番の力です。もちろん『ドラえもん』にも透明になる力を有するひみつ道具がいくつか登場します。その一つが“とうめいペンキ”です。

機能と効果

ドラえもんのとうめいペンキは、塗った箇所が透明に見えるペンキです。

「人の体に塗ると皮膚が透けて人体模型のように見える」とか「着衣に塗ると服が透けて裸に見える」なんてことにはならずに、いわゆる透明人間になります。

このことから、塗装面の物質は光を透過させているのではなく、光を回折(迂回)させて向こう側を映す状態になっているのだと推測されます。

この推測を元に当サイト『もしも道具』では、とうめいペンキを一枚板の片面に塗った場合は、塗った面からだけ向こう側が透けて見える、マジックミラーのような状態になると仮定しています。

とうめいペンキは水性で、しかも塗膜が弱いです。そのため水で流したり、タオルなどで拭くだけで、簡単に落とせます。

ドラえもんからもらえるのは、2.5リットル入りの1缶とします。

青島文化教材社 スカイネット 立体パズル 4D VISION 人体解剖 No.08 全身骨格解剖モデル
タイプ:
おもちゃ&ホビー
発売日:
2008年12月25日
発売元:
青島文化教材社(AOSHIMA)

有用性: ★★★☆☆

とうめいペンキの初めに考えられる用途は透明人間になることです。

けれど洗えば落ちるといっても体や服にペンキを塗るのは抵抗があるし、透明人間になるたびに塗ったり落としたりするのはかなり面倒です。「ひみつ道具を一つだけもらえるなら」という条件下では、透明人間になれる回数も限られてしまいます。

もしも透明人間になりたいのなら、とうめいペンキではなく、“隠れマント”か“透明マント”を選ぶべきでしょう。

ペンキであることと、消耗品であることを踏まえると、永続的に透明にしたい物品に塗るのが本来の用途だと考えられます。

たとえばコレクションケース。ガラス製は重くて割れやすいのが難点です。そこで樹脂製や木製のキャビネットの扉(1)をとうめいペンキで透明にすれば、軽くて丈夫なコレクションケースになります。

ほかにも(最上階の部屋なら)天井の一部を天窓にしたりなど、使い道はアイデア次第。DIYを趣味としている人なら、もっと思いもよらない使い道を見いだせるかもしれません。

(1)とうめいペンキの「着衣の上から塗ると、服だけではなく体ごと透明に見える」という不可解な特性は厄介です。キャビネットも塗る箇所によっては、収納した物ごと見えなくなるケースも考えられます。

危険性: ★★☆☆☆

「まったく目に見えない物品」の取り扱いは面倒です。小さい物なら見失ってなくしてしまったり、大きな物なら体をぶつけてしまったりするケアレスミスを誘発するでしょう。

透明人間になった場合は、「透明人間は人の目に見えない」という当たり前のことを忘れてはいけません。いつもの調子で道を歩いていると、自転車に全力でぶつかられるなど、思わぬ事故に遭う危険性があります。

悪用度: ★★★★☆

集合住宅であれば、壁や床にとうめいペンキを塗れば隣室の生活が丸見えになります。向こう側からこちら側は見えないのでバレる心配もありません。

ほかにも、単純所持や持ち込みが禁止されている武器などの隠匿に使ったり、透明人間になってさまざまな犯罪行為に及んだり……。

かようにとうめいペンキは悪行との親和性が高いひみつ道具です。使える量が限られている消耗品であることが唯一の歯止めでしょう。

秘匿性: ★★★★☆

とうめいペンキの秘匿性は、なにを透明にして、それをどう使うかによります。視覚だけを欺いても、五感はまだ四つ残っています。透明にしただけでは、感覚の鋭い人に感知されるおそれがあります。

透明人間はとりわけ感づかれやすいはずです。「気配」というものは侮れません。

とはいえ、雨などで簡単に流れ落ちてしまう点に注意して適切に運用すれば、とうめいペンキの存在が明るみに出ることはそうそうないでしょう。

革命度: ★★★☆☆

ガラスは割れやすいにもかかわらず、住宅や乗り物に多用されているのは、ひとえに透明だからです。たとえ空き巣や車上荒らしなどにつながるウイークポイントになったとしても、外を見られるようにするためにはガラスが欠かせません。

とうめいペンキがあれば、透過性が求められる部分にも、強度や軽量性などを優先した材質を選べるようになります。これはさまざまな分野に応用できる革命的なテクノロジーです。ただし、とうめいペンキの量産化および塗膜の強化が必要です。

22世紀のテクノロジーであるひみつ道具の解析は一筋縄ではいかないでしょう。しかし現在すでに研究されている「負の屈折率をもつ電磁メタマテリアル」に関連していると推定されるとうめいペンキに関しては、あながち解析不能とも限りません。

光メタマテリアル入門
タイプ:
単行本(ソフトカバー)
著:
田中 拓男
発売元:
丸善出版

まとめ

『ドラえもん』第36巻に収録された「いたずらオモチャ化機」では、ひみつ道具の“いたずらオモチャ化機”とそれを使うのび太を透明にして隠匿するためにとうめいペンキが用いられました。

この「ひみつ道具を人にバレずに使う」という目的こそ、とうめいペンキの本領でしょう。“どこでもドア”などの「きわめて有用だけれど秘匿性に難のあるひみつ道具」とのコンボに最適です。

ひみつ道具が二つ以上もらえるなら、とうめいペンキはとても魅力的。でも一つし選べない場合は、消耗品であることも相まって、個人ユースにおける出番は限定されます。

というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、とうめいペンキの優先度は星1つです。

道具名称:
とうめいペンキ
原作初出:
『ドラえもん』第36巻「いたずらオモチャ化機」
カテゴリ:
「と」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第36巻 / 透明
公開日:
2016年07月07日

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