未来からのび太宛に突然届いた小包は、セワシからのプレゼントでした。添えられた手紙によると、「幼稚園ではやっていますから、おじいさんにぴったりでしょう」とのこと。そんな小馬鹿した理由で贈られた“おはなしバッジ”ですが……。
ドラえもんのおはなしバッジは、おとぎ話を体験できるバッジです。おとぎ話の絵本を模したケースに入っているこのバッジを身につけると、その物語の内容に沿った出来事が身に起こります。
ただし、おとぎ話そのままではありません。たとえば『桃太郎』のバッジをつけたのび太が遭遇したキャラクターは、サルはサル顔の人、鬼はジャイアン、キジに至ってはなんと洋服の生地でした。かように大半はこじつけです。
セワシによると未来の幼稚園で流行っているらしいので、子供向けなのでしょう。それだけに、あまり刺激的な体験は期待できません。
原作には8個のおはなしバッジが登場しました。その中でタイトルが判明するのは次の5種類です。
ドラえもんからもらえるのは、上記の5種類をワンセットにしたものとします。
おはなしバッジは体験型のひみつ道具なので、巻き起こる出来事はすべて現実のものです。子供向けだからといって馬鹿にはできません。
主人公がなにか得する展開が物語にあれば、おはなしバッジの使用者もその恩恵にあずかれるのは特筆すべき有用性です。『浦島太郎』のおはなしバッジをつけたのび太はこんなおいしい思いをしました。
子供に相応の展開に置き換えられていますが特典としては十分すぎるくらいです。
休日を楽しむ選択肢の一つとして、おはなしバッジは大人でも「あり」でしょう。
未来では園児に使わせているくらいですから、おはなしバッジは安全性に万全の注意が払われていると思われます。
おとぎ話の物語に一通り付き合わなければならないのは、時と場合によっては面倒くさいばかりでしょう。それが望んだものではなければ余計にです。おはなしバッジをこっそり人につけるのは、そこそこ迷惑な悪用です。
おとぎ話のキャラクターに配役される人は自覚がないまま参加します。彼らは「たまたまそうなった」としか思いません。また、巻き起こる出来事は実現可能な範囲に収束します。
よって、第三者がおはなしバッジの存在に気がつく可能性は極めて低いでしょう。
仮想現実ではなく、現実の人や物事をコントロールするのは恐るべき効果です。社会通念において許されざる効果だといっても過言ではありません。おはなしバッジのテクノロジーが解析されて応用されたなら、社会がひっくり返るでしょう。
原作では「のび太は幼稚だから幼稚園で流行っているひみつ道具がぴったり」という文脈で登場したおはなしバッジですが、なかなかどうして大人でもかなり楽しそうなひみつ道具です。
それでも数あるひみつ道具の中からあえて選ぶ一つとしては弱いかなあ。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、おはなしバッジの優先度は星
つです。