もしもボックス

ドラえもんのひみつ道具を一つだけもらえるとしたら、貪欲な人はすべてをカバーできる(かもしれない)万能なものを選ぶでしょう。その要望に応えるひみつ道具の一つが“もしもボックス”です。

万能なひみつ道具の中でも、もしもボックスはほかとは違うある方法で望みを実現するのですが……。

機能と効果

もしもボックスは、「もしも○○な世界だったら」を体験できる電話ボックスです。

これの中へ入って受話器に希望する条件を告げると、ベルが鳴り響き、そのとおりの世界になります。取り消しを告げると、今度は元の世界に戻ります。

もしもボックスがきっかけで魔法世界での冒険が始まる大長編『ドラえもん のび太の魔界大冒険』で、こんなやりとりがありました。

のび太
「取り消したら、ぼくらは元の世界へもどれるけど……、魔法世界のほうはどうなるの?」
ドラミ
「パラレルワールドになるわけよ」
のび太
「パラ……、なんだいそれは」
ドラえもん
「つまりね、あっちはあっちで、こっちと関係ない世界としてつづいていくわけ」
大長編『ドラえもん のび太の魔界大冒険』より

ほかの世界を操るひみつ道具とは違って、もしもボックスは世界を改変するのではなく、条件に合ったパラレルワールドへ移っているわけです。

元の世界から移るのは、もしもボックスの中に入っていた人や物だけです。中に入り切れる範囲なら、いくらでも同時に移れます。

ややこしい話ですが、移った先のパラレルワールドにはもしもボックスに入っていた人はいないので、同じ人が二人になってしまうことはないものの、その存在は認知されています。

有用性: ★★★★★

のび太がもしもボックスに「もし世界中があやとりにむちゅうだったら……」とオーダーしたことがあります。その世界でのび太は、特技のあやとりを活かして地位と名誉を手に入れました。のび太にとっては夢のような世界です。

そういったパラレルワールドで生涯を過ごすことが、もしもボックスの究極の使い方です。

自分が生きやすい世界へ移り住むことで救われることもあるでしょう。もう世界に合わせて自分を変えなくていい。世界を自分に合わせられるのです。

元の世界を捨てることになるけれど、背に腹はかえられません。出口が見えないほど人生に行き詰ってしまったら、パラレルワールドへの移住は選択肢の一つとして有効でしょう。

もちろん、基本は一時的な滞在です。自分にとって都合のいい世界で過ごす休日は、最高の息抜きになるはず。もっとカジュアルに、妄想的な世界を観光するのもよし。

例えば「もしも恐竜が絶滅しなかったら」。リアル『ジュラシック・パーク』です。

映画『ジュラシック・ワールド』予告編

早世したクリエイターが存命しているパラレルワールドへ行けば――そんなことが許されるのなら――彼らの新作に触れられます。藤子・F・不二雄先生による『ドラえもん』の新作だって読めるのです。

とにかく空想の数だけ世界があります。イマジネーションが尽きない限り、退屈とは無縁の刺激的な人生が送れます。

現在の医学では治せない病気になっても、もしもボックスがあれば大丈夫。その病気の治療法が確立された世界へ行けば治せます。これは特筆すべき有用性でしょう。

危険性: ★★★☆☆

前項で「恐竜が絶滅していない世界で観光」とは書いたものの、もしかしたら観光どころではない殺伐とした世界になっているかもしれません。『猿の惑星』のように。

映画『猿の惑星: 新世紀』予告編

不用意に世界をオーダーすると、危ない目に遭う恐れが多分にあります。

最悪のケースは、パラレルワールドにいるときにもしもボックスが壊れたりして使えなくなってしまうこと。もしもボックスなくして元の世界へは戻れません。

パラレルワールドの状況次第では、問題が起こる前に即刻戻るべきでしょう。

悪用度: ★★★★☆

パラレルワールドでの出来事は、元の世界では知る由もないことです。パラレルワールドで悪行の限りを尽くしても、捕まる前に元の世界へ戻れば裁かれはしません。違う世界へ逃亡するのだから、究極の高飛びです。

また、亡くなられたクリエイターが存命しているパラレルワールドで彼らの新作を確認して、それらをこの世界で自分の作品として発表するのも悪質な所業です。この世界に存在しない作品の盗作なのだから、絶対にバレません。

秘匿性: ★★★☆☆

普通、電話ボックスは家にありません。人に見られたら、興味をかなり持たれるはず。そうなると、その電話ボックスが実はもしもボックスだとなにかの拍子に気がつく人はきっといます。

なので人目につかないように保管することになりますが、いかんせんデカい。収納しようがないので、遅かれ早かれ同居人に見つかるでしょう。一人暮らしでないと隠し通すのは困難です。家族構成や住宅事情が秘匿性を左右します。

もしもボックスの存在そのものを見抜かれなければ、パラレルワールド間を移動していることはバレないでしょう。

革命度: ★★★★★

もしもボックスをドラえもんは「一種の実験室なんだ」と評しました。実験の中でも特に社会実験において成果が爆発的に得られるでしょう。

社会実験は、当然ながら社会へ直接影響を及ぼすため、実行できる範囲が限られています。しかし、パラレルワールドという形で結果を確認できるもしもボックスならば、社会への影響を度外視して無制限に実行できます。

消費税を撤廃したらどうなるのか、政権が代わるとどうなるのか。さまざまなケースで社会がどう変わるかを確かめられます。机上の空論とされるベーシックインカム(1)のような極端な政策でさえ例外ではありません。

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それは政治家にとって「不都合な真実」を国民に知られてしまうことでもあります。特定の政策が実施されなかった世界へ行けば、その施策の成否が明白になります。

自分に都合のいいことしか公表しない政治家にとって、これは大きな痛手です。これは日本の話に限りません。もしもボックスの所有を公にしても、情報操作でなかったことにされるのがオチでしょう。

それはさておき、パラレルワールド間を自由に行き来できること自体がとてつもなく革命的なのはいうまでもありません。

(1)ベーシックインカムとは、生活を送るのに必要最低限の現金をすべての国民へ政府が定期的に支給する制度。

まとめ

万能系のひみつ道具はもちろん魅力的だけど、人や社会を操るのはおこがましいにもほどがあります。けれどもパラレルワールドという形で実現するのなら……。

四次元ポケット”がないと困るほどデカいのが気になりつつも、その魅力にはあらがい難い。というわけで、もしもボックスの優先度は星4つ。当サイト的ドラえもんのひみつ道具で欲しいものランキングにランクインです。

道具名称:
もしもボックス
原作初出:
コミックス第11巻「もしもボックス」
カテゴリ:
「も」から始まるもの / コミックス第11巻 / 万能 / 人気 / 体験 / 定番 / 電話
公開日:
2014年11月23日
更新日:
2018年06月02日

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