夏休みの計画を同級生たちで言い合っている中、のび太は一人ニコニコするだけで予定を話そうとしません。そのせいでみんなから「毎日ごろごろしてくらすんだろう」と高を括られたけれど、実は海底を歩いて太平洋横断するという壮大な計画を立てていたのです。
のび太がゴールに定めたサンフランシスコまでの直線距離は、東京からおよそ8,260km(Googleマップ調べ)。通常の歩行スピードでは夏休み中に踏破するのは不可能です。そこで出番となったひみつ道具が“快速シューズ”です。
快速シューズは水中用のひみつ道具です。この靴を履くと、陸上を歩くときの10倍のスピードで水底を歩けます。着用中は、体が水に浮かないので泳げません。
あくまで水中用なので、使用者の体が頭まで完全に水中に潜っているときだけ10倍のスピードを出せるものとします。
ただ水底を歩くだけならダイビング用ウエイトで十分だし、東南アジアのバジャウ族はウエイトすら使わず素潜りで海底を歩いて漁をします。
Sea Bed Hunting On One Breath - BBC One
快速シューズならでは有用性はそのスピードです。人間の歩行速度は時速5キロ前後ですから、その10倍の時速50キロで水中を歩けます。ただし時速50キロともなれば水の抵抗はかなり大きくなります。
のび太が快速シューズを履いて太平洋横断に挑んだときは、疲れた様子もなく海底を一日中歩きつづけられました。これは体を水圧から守るひみつ道具の“深海クリーム”を併用していたからだと推定されます。
深海クリームがなければ水の抵抗を軽減できないので、身体的負担が重すぎて長時間歩いてはいられないでしょう。
そもそも人間は水中で息ができません。また海水は冷たくて体温が奪われます。海中を移動するには快速シューズのほかにタンクや保護スーツなどのダイビング器材が別途必要なので、手間も費用も掛かります。
結局、原作のように“エラ・チューブ”や深海クリームと組み合わせて使わなければ、快速シューズは真価を発揮できないでしょう。
時速50キロで障害物にぶつかれば、たとえ水中であろうと大怪我を免れません。
密漁に使えなくもないくらいでしょう。
時速50キロで海底を疾走する人間は、もはやUMAです。目撃されたら瞬く間に噂が広まってしまうでしょう。とはいえ海は広大ですから、ダイビングスポットを避ければ目撃される可能性は低く、秘匿性を守れます。
人間が水中で活動する場合に生じる課題は歩行速度以外にあります。現代の人類が快速シューズだけを手に入れても、大きな発展は見込めません。
水中を猛スピードで疾走するのは、なんとも楽しそうです。けれど、「もしもドラえもんのひみつ道具を一つだけもらえるとしたら」という条件では真価を発揮できず、宝の持ち腐れになってしまいます。
ということで、快速シューズの優先度は星
つです。