「なんか、使いみち、ないかなあ」とドラえもんの頭を悩ませたひみつ道具が“アベコンベ”です。珍しくドラえもんがのび太に使い道を相談したほど奇怪なアベコンベとは、一体どのようなひみつ道具なのかというと……。
ドラえもんのアベコンベは、物体の性質や作用をあべこべにするスティックです。ハート形の先端で物体に触れるとすぐさま効果が生じて、反対側で再び触れると元に戻ります。
一言で「あべこべ」といっても、その効果は多岐にわたります。不可解な結果をもたらす場合もあり、どのような効果が生じるかは使ってみるまでわかりません。
原作漫画では、次のような効果が確認できました
てんとう虫コミックス『ドラえもん』第4巻「アベコンベ」より
- 扇風機
- 熱風が出る。
- 物干し竿
- 干した洗濯物がずぶぬれになる。
- たばこ
- 吸えば吸うほど残りが長くなる。
- ひげそり
- ひげが伸びる。
- ヘリウム風船
- ボウリングボールのようにずっしり重くなる。
- 人が乗っている自動車
- 人が自動車を担いで走り出す。
- 犬の散歩中の飼い主
- 立場が逆転して、犬が飼い主を散歩させる。
- ドラえもんの頭
- 上下がさかさまになる。
- のび太の頭
- 頭がよくなる。
効果が定まらないアベコンベを活躍させるのは一筋縄では行きません。
のび太が「いろいろやってみれば、そのうちいい使いみちがわかるさ」とアベコンベを手当たり次第に使って騒動になったものの、確かにいくつか有用な使い道が見つかりました。
たとえばひげそり。アベコンベを使ったひげそりなら、ひげをあっという間に伸ばせられます。ファッションでひげを生やしたいのに勤務先で禁止されている。なんて場合にこれを使えば、休日だけオシャレひげを楽しめます。
吸えば吸うほど残りが長くなるたばこは、愛煙家にとって垂涎の的でしょう。
このほかにも有用な使い道はまだ埋もれているはず。しかし前例にないものがどんなふうにあべこべになるかは確証が得られないため、有用性はまったくの未知数です。
とにかく試行錯誤を重ねていけば、とんでもない成果が得られるかもしれません。
使ってみるまでなにが起こるかわからないから、どのような危険が潜んでいるかもわかりません。有用性が未知数なように、危険性もまた未知数です。
アベコンベを施錠されたドアや金庫に使ったら鍵を開けられるかもしれないし、通報されても捕まえに来た警官に使ったら逃亡に協力してくれるかもしれません。すべて「かもしれない」とはいえ、犯罪に使える可能性があるのは間違いありません。
アベコンベで生じるさまざまな効果に共通する特徴はただ一つ、「現実ではあり得ないこと」です。なにに使おうとも、その特異性は隠せません。
事物のありようを根本からひっくり返すことは、局所的とはいえ世界のルールを書き換えるも同然です。「神の御業」といっても過言ではないでしょう。
アベコンベは、思いも寄らない使い道を発見できる面白味があるひみつ道具です。潜在的な可能性は計り知れません。数あるひみつ道具の中からアベコンベをあえて選ぶのはかなりのギャンブルだけど、意外にも悪くない決断かもしれません。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、アベコンベの優先度は星
つです。