満員電車に揺られながら、ふと『もしも「どこでもドア」があったら……』という空想にふけったことはありませんか?
学校だって、職場だって、扉を開ければすぐそこに! 海外だろうと、どこだろうと、行き放題!
でも、「どこでもドア」はそんなお気楽な話だけじゃ済まされない、この世の平穏を脅かしかねない怖いひみつ道具で――。
ドラえもんの「どこでもドア」は、どこでも行けるドアです。行きたい場所を告げてこのドアを開けると、扉の先はもう目的地です。
頭の中の考えを読み取って補完する機能があるので、行き先を詳細に言わなくても、無言で開けても、基本的には目的地へつながります。
「どこでも」とはいうものの、実際は内蔵されている地図に登録済みの場所へしか行けません。そして地図の範囲は地球から10光年です。
「どこでもドア」は「空間をつなげる」ひみつ道具です。一部で言われている「使用者の複製」は『ドラえもん』の二次創作物における独自設定です。
「どこでもドア」さえあれば、ぎゅうぎゅうの満員電車に乗らずに済みます。それどころか、もう移動するのに時間も費用もいっさい掛からない!
学校や職場がどこでも、自宅の最寄り駅がどんなに遠くても構いません。リモートワークじゃなくたって、どこに住んでもやっていけます。
休日のおでかけだって自由自在。推しがどこでイベントをやっても、楽に追いかけられます。
「どこでもドア」の使い道は移動に限りません。自宅より暑い地域や寒い地域につなげて開けておけば、天然のエアコンです。アイデア次第で使い道はさらに広がるでしょう。
なんて実用的! ところが「どこでもドア」には、そんな有用性を帳消しにするほどの致命的な欠点があります。それは秘匿性の欠如です。
なにせフルサイズのドアだから、「こっそり持ち歩く」なんてできません。「どこでもドア」を運用するには「四次元ポケット」が必須なんです。
「ドラえもんのひみつ道具を一つだけもらえる」という条件下、つまり「四次元ポケット」なしで「どこでもドア」を誰にもバレずに使い続けるのは困難を極めます。
バレたってかまわない? いや、その存在を知られてしまったが最後、その悪用度の高さ(後述)ゆえに没収や強奪は免れません。
ひみつ道具に誰も目をくれない『ドラえもん』の世界とは違って、我々の暮らすこの世界では、「どこでもドア」は極めて危うい存在となります。
「脳内の考えで行き先が決まる」というのはなかなか危なっかしい仕組みです。
「どこでもドア」をぼんやりと開けると、「しずかちゃんのお風呂」みたいな場所へつながりかねません。現実では「のび太さんのエッチ!」じゃ済まされないので気をつけましょう。
最悪のケースは、過激な思想の人に「どこでもドア」の存在を知られてしまうこと。あなたの身はおろか、世界が危機に瀕するかもしれません。
なぜ、過激な人に「どこでもドア」の存在を知られると危険なのか。それは「どこでもドア」はあらゆる逸脱行為を助長するからです。
のび太がこれで一番よく行くのは「しずかちゃんが入浴中のバスルーム」です。そう、「どこでもドア」の行き先に制約なんてありません。
「どこでもドア」の行き先を制約する機能「プライベートロック」は、副読本による後付け設定です。当ブログは藤子・F・不二雄先生による原作漫画を聖典としているため、これを考慮しません。
あなたの大切な人がバスルームから裸のまま行方不明になって、二度と戻ってこなかった。そんな悪夢のような恐ろしい出来事を引き起こします。
軍の武器庫から手榴弾を盗むのも、それを雑踏に投げ込むのも、造作もありません。世界中の人々が「今この瞬間に爆破されるかもしれない」と怯えて暮らすことになります。
「どこでもドア」による犯罪は、現代の科学知識では実証できない「不可能犯罪」です。これに人類が立ち向かわせられるのです。
「どこでもドア」の認知度はひみつ道具の中でもトップクラスです。ピンクのドアが突然表れて人が通ってきたら、「どこでもドア」だと瞬時に理解する人も多いでしょう。
とはいえ、あまりにも非現実的だから、ドッキリだと思うかも?
Magic Door Prank (『モニタリング』の元ネタ?)
なんにせよ「どこでもドア」を持ち歩けば嫌でも人目を集めます。やはり「四次元ポケット」あってこそのひみつ道具です。
組織的かつ計画的に「どこでもドア」を用いて攻撃されたら、ホワイトハウスだろうとペンタゴンだろうと、ひとたまりもないでしょう。
世界の安全を脅かすほどの力が「どこでもドア」にあることは明白です。その存在を知られたら、間違いなく没収、いや強奪されます。
国家に接収されて研究が進んで、量産できるようになったとしても、核兵器なみに保有が制限されるはずです。
もしも、それでも「どこでもドア」が普及したら、運輸業をはじめとするさまざまな産業から、犯罪から、原油や土地の価値から、「国」という概念から、なにからなにまでひっくり返ります。
現代の科学力では量産できなかったとしても、「どこでもドア」が一つあるだけで世界は変わっていくでしょう。
たとえば火星のテラフォーミング(地球化)です。「どこでもドア」を用いれば、現代の科学技術でもテラフォーミングが現実的になります。宇宙世紀の始まりだ!
悪用度が異常に高く、秘匿性が極めて低い。そして「四次元ポケット」がないと満足に運用できない。それが「どこでもドア」です。
喉から手が出るほど欲しいけど、考えれば考えるほど手が出せません。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、「どこでもドア」の優先度は星 つです。
この記事の「ゆっくり解説」版