どこでもドア

すし詰めの満員電車に揺られながら、ふと「もしも“どこでもドア”があったら」という空想に耽ったことはありませんか?

あそこへ行こう、あそこにも行こう! けれどもどこでもドアはそんな夢物語だけではない、悪夢のような結末をもたらす可能性を秘めています。それは――。

機能と効果

ドラえもんのどこでもドアは、どこでも行きたい場所(1)へ空間をつなげる(2)ひみつ道具です。行先を音声で指定して扉を開くと、そこはもう目的地です。

行先は詳細に指定しなくても希望どおりの場所へつながります。これはドアノブを触った人の考えを読み取って補完する機能の働きです。音声による指定は精度を上げるために用意されているようで、無言で開けても基本的には作動します。

有効距離は10光年です。ドラえもんの口ぶりからすると、一度に移動できる範囲ではなく、「地球から10光年まで」という制限のようです。

(1)厳密にいうと、行けるのは内蔵地図に登録されている場所だけです。とはいえ地球上はほぼ網羅されていると推定されます。

(2)一部ネットで言及されている「使用者の複製」は『ドラえもん』の二次創作物における独自設定が元の話です。原作のどこでもドアはあくまで「空間をつなげる」ひみつ道具です。

有用性: ★★☆☆☆

どこでもドアがあれば、もう満員電車に乗らなくていい。今まで移動にかかっていた時間や費用がまるまる自由になります。なんて素晴らしい!

世界中のどこでも通勤通学圏内です。より安く、よりよい環境の住まいを選べます。会社や学校どころか、最寄りの駅がどんなに遠くても関係ないのですから。

休日のおでかけだって自由自在。「そうだ、京都へ行こう」なんてものともしません。

移動以外にも使えます。自宅よりも暑い場所や寒い場所へどこでもドアをつなげて扉を開けておけば、文字どおり「自然風」による天然のエアコンになります。使い道はアイデア次第です。

かようにどこでもドアの有用性は、ひみつ道具の中でも間違いなくトップクラスです。けれども、これらの有用性をすべて帳消しにしてしまう大きな欠点があります。

それは秘匿性が皆無なこと。持ち歩くにも、隠しておくにも大きすぎます。どこでもドアを運用するには“四次元ポケット”が最低限必要です。

どこでもドアの存在がバレてしまったら、その悪用度の高さ(後述)故に没収や強奪は免れません。

ひみつ道具の存在を誰も気に留めない『ドラえもん』の世界ならともかく、我々が暮らすこの世界でどこでもドアを使うのは、あまりにも無謀なことなのです。

危険性: ★★★☆☆

どこでもドアで外国へ行くことは、すなわち無断で越境すること。不法入国ですから、外国へ無暗に行くのはトラブルの元です。

また、考えを読み取って行先を修正するので、ぼんやり開けると「しずかちゃんのお風呂」的な場所へつながりかねません。現実だと「のび太さんのエッチ!」では済まされないので、男性は特に注意が必要でしょう。

ちなみに、「男性は7秒に1回エッチなことを考えている」というのは根拠のない俗説です。

悪用度: ★★★★★

どんなセキュリティも戸締りも、空間をつなげて通り抜けられるどこでもドアの前では無力です。侵入盗・誘拐・密輸など、ありとあらゆる犯罪を助長します。

常識では考えられない、どこでもドアならではの悪行もあります。例えば活火山の噴火口や大海原の上につなげて人を突き落としたり、もっと大胆に宇宙空間へ放り出したり……。

これらの犯罪に手を染めても、どこでもドアの存在を知られない限り足がつくことはないでしょう。現存する交通手段では短時間で到着することが考えられない遠く離れた場所を犯行現場に選べば、犯行を実証されることはありません。

通勤通学などの一般的な移動に使う場合とは違って、犯行現場となる行先では、どこでもドアを持ち歩いたり、長時間滞在したりすることが少ないので、秘匿性の問題もある程度カバーされます。

秘匿性: ★☆☆☆☆

なにもなかった空間にピンクのドアが突然表れて人が通ってきたら、誰がどう見てもどこでもドアです。どこでもドアの認知度は、どの世代でも高い(3)ので、一発でバレてしまいます。

ただ、あまりにも非現実的すぎて、自分の見たものが本物だとは信じられない人も多いでしょう。テレビのドッキリだと思うかもしれません。

Magic Door Prank (『モニタリング』の元ネタ?)

移動の瞬間を見られなくても、ドアを持ち歩いていたら人目を集めます。やはり、どこでもドアは四次元ポケットあってのひみつ道具です。

(3)参考: 交通と都市の未来系 - 東芝エレベータ

革命度: ★★★★★

革命を望む過激派の手にどこでもドアが渡ったら、要人の誘拐や暗殺に使われてしまうでしょう。組織的かつ計画的にどこでもドアが悪用されたら、その魔の手から逃れるすべは(現代のテクノロジーにおいて)ありません。

国家の安全を脅かすほどの力がどこでもドアにあることは明白です。存在を知られたが最後、決して野放しにはされません。没収や強奪されることは目に見えています。

国に没収されて研究が進み、量産が可能になったとしても、核兵器なみに保有が制限されるはず。個人でどこでもドアを使うのは夢のまた夢です。

どこでもドアで来られない場所を設定できる機能の「プライベートロック」は、副読本による後づけ設定です。当サイト『ドラえもんのひみつ道具を一つもらえるとしたら』では、藤子・F・不二雄先生が執筆した原作漫画を聖典としているため、これを考慮しません。

もしも、それでもどこでもドアが普及したらどうなるでしょう。

まずは公共交通機関と運輸の存在価値がほとんどなくなって、関連産業が大打撃を受けます。ガソリンエンジンが必要とされることが激減して原油の価値も暴落。世界的な混乱が始まります。

その一方で新しい需要が生じて、それを供給する今までになかった産業が発展することで、いずれはバランスが取れるでしょう。しかし変革の速度があまりにも早すぎると、バランスを崩して世界経済が破綻しかねません。

どこでもドアの普及速度には適切なコントロールが求められます。しかしどれだけ厳しくルールを定めても、それを破る組織や国家は必ず現れます。ルールはただの建前と化すでしょう。

国境は瞬く間に形骸化します。「国」という概念すら揺らぐはずです。

そして当然ながら悪用する者が現れます。女性や子供の拉致が爆発的に増えるでしょう。世の中には、人の姿をした獣「ひとでなし」がいることを忘れてはいけません。

こうしてどこでもドアは世界の在り方を根底からひっくり返してしまいます。やはりどこでもドアが普及するシナリオは絶対にありえません。保有が許される国家さえ限られるでしょう。

夢のある話もしましょう。環境が地球に似ている可能性がある惑星「グリーゼ832c」が2014年に発見されました。このグリーゼ832cは、なんと地球から(天文学的にはとても近い)16光年しか離れていなかったのです。

どこでもドアの有効距離である地球から10光年以内にグリーゼ832cのような惑星があって、まだ観測されていなかったとしたら……。

どこでもドアは内蔵地図に登録されている場所へしかつながりません。裏返せば、ドラえもんがやってきた2123年までに発見されて登録が済んでいる惑星ならば、そこへ行けるのです。

そのような惑星がなかったとしても、火星のテラフォーミング(地球化)という夢物語が残っています。どこでもドアを使えば、テラフォーミングにかかるコストを極端に下げられます。SFで夢見た世界が現実になるかもしれません。

どこでもドアの所有が個人に許されなくても、このような形で夢を見させてくれることでしょう。

まとめ

悪用度が異常に高く、秘匿性がきわめて低い。そして四次元ポケットがないと満足に運用できない。それがどこでもドアです。

喉から手が出るほど欲しいけど、考えれば考えるほど手が出せません。欲望のままになれば欲しい度は星5つ。それでも「ひみつ道具を一つだけもらえるとしたら」を真剣に考えると、どこでもドアの欲しい度は星1.5つです。

道具名称:
どこでもドア
原作初出:
コミックス第6巻「のび太漂流記」
カテゴリ:
「と」から始まるもの / コミックス第6巻 / 人気 / 定番 / 悪用 / 移動
公開日:
2014年08月03日
更新日:
2017年12月28日

関連記事と広告

あわせて読みたい