大長編『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』には、その前身といえるエピソード「海底ハイキング」(てんとう虫コミックス第4巻収録)があります。
のび太が海底を歩いて太平洋を横断するこのエピソードに登場する“深海クリーム”は、これまた“テキオー灯”の前身といえるひみつ道具です。
ドラえもんの深海クリームは、人体を深海に適応させるひみつ道具です。このクリームを全身に塗ると、深海1万メートルの水圧にも耐えられます。また、どんなに水温が低くても体温を逃がしません。
効果時間の詳細は不明。のび太が深海クリームを塗り直すことなく何日も海中に滞在していたことから、効果時間は長期に及ぶことがうかがえます。
地球に残された最後のフロンティアだといわれる深海を生身で探索できるのは画期的なこと。けれども深海で酸素や明かりを確保するためには、深海クリームのほかにもかなりの装備が必要です。
その点テキオー灯ならば、深海のみならず宇宙空間で人間が活動するために必要な手段のすべてを一気に確保できます。テキオー灯の前では深海クリームは形無しです。
深海クリームが単体で活躍するのは、水中で呼吸する手段が必須の深海より、むしろ海上や浅い海です。気温や水温を問わず楽しまれているサーフィンなどのウォータースポーツでは、体温を守れるだけでもかなり重宝するでしょう。
体に塗り残しがあったらどうなるのか、効果はどのような条件で切れるのか。深海クリームには不明瞭な要素が多く、ほかの装備を整えたとしても、生身で深海へ潜水するのは多大なリスクがつきまとうでしょう。
これといった悪用は考えられません。
真冬の海などの冷水に平然と長時間浸かっていれば、周囲から「なぜ平気なの?」と疑問を持たれてしまいます。深海クリームを塗ってウォータースポーツを楽しむ場合は、常識で考えられる時間内に海から一旦上がるべきでしょう。
深海はというと、深海探査艇と遭遇して目撃される確率は度外視してかまわないほど低いものの、深海クリームだけでは深海へ到達できないので問題外です。
見た目はただの肌用クリームなので、深海クリーム自体は特に隠さなくても問題ありません。
深海魚が水圧で潰れてしまわないのは、高い水圧に適応したタンパク質で細胞を支えているから、そしてなにより体内に気体を保持しないからだそうです。肺呼吸の人間ではそうはいきません。
人体が深海1万メートルの水圧に耐えられるという、体内の気圧がどうなっているのか皆目見当がつかない摩訶不思議な効果が、クリームを体表に塗るだけで得られるのだからそれは革命的です。
深海を舞台にした映画『アビス』や、深海魚が好きなこともあって、深海への憧れはあります。けれども深海クリームだけでは深海を探索できないのでは話が始まりません。
それでも、体の冷えを気にせずに海で泳げる利便性は割と捨てがたい。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、深海クリームの優先度は星
つです。