トッカエ・バー

近所の公園でロケ中に姿をくらましたアイドル歌手の丸井マリをドラえもんとのび太が偶然見つけました。聞けばスケジュールが厳しすぎて逃げ出したと言うのです。時間に余裕のあるのび太たちが羨ましい、できれば代わりたいとさえ言いました。

そこでドラえもんが取り出したひみつ道具が“トッカエ・バー”です。

機能と効果

ドラえもんのトッカエ・バーは、人の体を取っ替えるひみつ道具です。

バトントワリング用のバトンに似た形をしていて、その端と端を二人でそれぞれつかむと、二人の中身(意識・記憶・心・魂?)が入れ替わります。

入れ替わってから、さらにほかの人の体へ入れ替わるリレーも可能です。

脳がどのようになっているかは不明。原作エピソード「ぼく、マリちゃんだよ」では、のび太がアイドル歌手の丸井マリになって歌を歌っても音痴のままでした。すくなくとも、脳がつかさどる能力は入れ替わっていることがうかがい知れます。

有用性: ★★★☆☆

大前提として、相手の了承を得ずにトッカエ・バーで入れ替わるのは悪用です。トッカエ・バーを使うなら、まずは相手を納得させなければなりません。

しかし大抵はどちらかが一方的にメリットを得る組み合わせばかりで、Win-Winとなるケースはまれでしょう。

肉体は社会における個人を特定するIDの役割を担っています。その体を取り替えるということは、戸籍をはじめとする個人に付随するすべてを交換することになります。

それでもお互いが入れ替わりを望むのなら、トッカエ・バーは奇跡の恩恵となるでしょう。

もちろん人生を取り替えるまでいかずに、一時的に入れ替わるだけの使い道も考えられます。しかし相手の意思が介在する以上、こちらの思惑どおりにならないリスクが高いのだから、「一時的」程度の覚悟なら使わないほうが賢明です。

危険性: ★★★★☆

トッカエ・バーで体を取り替えた相手が元の体を返してくれるとは限りません。

もしも致命的な持病を隠していたら? 過去に重大な犯罪を犯していていたら? 返す当てのない借金を負っていたら?

入れ替わりは、肉体に紐(ひも)づけられている負の遺産を押しつけられる危険と隣り合わせです。

悪用度: ★★★★☆

度を越した憧れから、有名人の人生を自分のものにしたいと願っている人は少なからずいるはずです。トッカエ・バーがあれば、そんな欲望をかなえられます。

入れ替わりを法的に証明することは不可能です。人生を奪われた有名人がどれだけ訴え出ようとも、ストーカー扱いされるのが落ちでしょう。

替え玉受験なんていうしょぼい悪用もあります。

そして究極の悪用は、老いるたびに若い人の体を脈々と乗っ取っていくことです。さすれば即死さえ免れればとわに生き永らえます。

不老不死のためなら他者の犠牲をいとわない人なぞ掃いて捨てるほどいるでしょう。トッカエ・バーの存在は、けっして人に知られてはいけません。

秘匿性: ★★★☆☆

自分の体を明け渡すからには、相手が気づかないようにトッカエ・バーで入れ替わるのは無理難題です。

第三者はというと、「人が変わったみたい」と感じとる人はいても、そこから「本当に別人になった」という確信に至ることはまずないでしょう。

当事者が入れ替わりを秘密にしていれば、新しいパーソナリティーが周囲にだんだん浸透して、違和感も消えていくと考えられます。

両者合意のもとによる入れ替わりなら、秘匿性はおそらく守れます。

革命度: ★★★★★

「人は死ぬと体重が21グラム減る。それが魂の重さだ」という話は根拠に乏しい疑似科学です。今のところ魂の存在はある種のおとぎ話です。ではトッカエ・バーによる「入れ替わり」とは、いったいなにが起こっているのでしょうか。

我々が感じている意識の正体とは? そして人はどこから来てどこへ行くのか……。

トッカエ・バーは、そんな永劫の謎を解き明かす鍵となるかもしれません。

物理的に脳を入れ替えていたとしても、脳移植は究極の臓器移植なのだから、それはそれで革命的です。

まとめ

昭和なら『転校生』、平成なら『君の名は。』といった時代を代表するような青春映画がくしくも「入れ替わり」を題材としています。それだけ想像をかきたてる題材なのでしょう。

ついてはトッカエ・バーは王道のひみつ道具だといっても過言ではありません。なら自分が入れ替わりたいかというと……。

というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、トッカエ・バーの欲しい度は星1つ。人によって評価が割れそうなひみつ道具です。

余談

藤子・F・不二雄先生は『ドラえもん』の「ぼく、マリちゃんだよ」以外にも、『SF短編』シリーズの「換身」と「未来ドロボウ」で入れ替わりを題材にしています。

『SF短編』シリーズは青年誌などで発表していた読み切り漫画です。『ドラえもん』でも見え隠れしている藤子・F・不二雄先生のブラックな一面やシニカルさがより楽しめる貴重なシリーズになっています。

道具名称:
トッカエ・バー
原作初出:
コミックス第8巻「ぼく、マリちゃんだよ」
カテゴリ:
「と」から始まるもの / コミックス第8巻 / 交換
公開日:
2017年04月14日
更新日:
2017年04月14日

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