ひみつ道具の中には、ドラえもんが取り出しただけで使わずじまいのものもあります。“せん風機”はその一つ。なにやらすさまじい風を起こせるようですが……。
通常の扇風機と区別するためか、アニメ版では名称が“ふきとばし・せん風機”とされました。
明日のテストをなんとかしたいと泣きすがるのび太にドラえもんはこう言い放ちました。
「それじゃ、このせん風機で……学校をふきとばせば、テストがない」
てんとう虫コミックス『ドラえもん』第2巻「テストにアンキパン」より
のび太をいさめるために軽口をたたいたのだろうけど、言葉どおりの効果を発揮できるとしたら、とんでもない風力です。気象庁が採用しているビューフォート風力階級(1)では間違いなく最大レベル。竜巻による大災害に匹敵します。
これだけの風力が出せるとなると、最初にせん風機自体が飛んでいってしまいます。通常の機器であれば、こういった問題を解決する機能も搭載されますが、ひみつ道具は基本的に一点特化型なので、なんの対策も施されていないでしょう。
(1)参考: 風向風速計 - 気象庁
強力な風を起こせる大型扇風機は、業務用以外に見たことがありません。個人ユースでせん風機が活躍する場面はおそらく皆無でしょう。
なにせ竜巻レベルの風力ですから、スイッチを入れた途端に手がつけられなくなって、周囲の物を吹き飛ばしながらどこかへ飛んでいってしまうでしょう。なんとも危険で迷惑なひみつ道具です。
作動中のせん風機を固定することができれば、それはもう破壊兵器です。鉄筋コンクリート構造の学校施設を吹き飛ばせるのですから、ほとんどの建築物を跡形もなく破壊できます。
とはいえ、せん風機を固定するには大掛かりな設備が必要で、個人で用意できる規模ではありません。
見た目は通常の扇風機と変わらないので、使わなければ隠しておくのは簡単です。
仮にせん風機を使ったとしても、作動中は吹き飛ばした物と紛れて視認が難しい上に、エネルギー切れや故障で作動が止まればそのほかの残骸と見分けがつかないでしょう。一種の竜巻による被害として処理されるかもしれません。
日本列島に甚大な被害をもたらしたせん風機は、エネルギーが切れて太平洋沖に墜落。アメリカ軍により秘密裏に回収されて……。
そんな三文小説みたいなことが現実になるかも? 都市伝説に昇華して「信じるか信じないかはあなた次第!」と語られそうな話です。
スイッチを入れて後は野となれ山となれ、としか代物をもらっても仕方がありません。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、せん風機の優先度は星
つです。