「嘘も方便」とはよく言ったもので、嘘が救いにつながることは確かにあります。とはいえ、嘘の大半は人をだます目的なのもまた事実です。だまされてはかないません。嘘発見器が発明されたのは、まさに「必要は発明の母」でしょう。
ドラえもんのひみつ道具にも、その名もずばり“うそ発見器”があります。エピソード「プロポーズ作戦」で、のび助と玉子(のび太の両親)の夫婦喧嘩を解決するために使われたのですが……。
このページでは、「うそ発見器」はひみつ道具を、「嘘発見器」は嘘を判定する機器全般を指しています。
ドラえもんのうそ発見器は、人が嘘をついているかを調べるひみつ道具です。センサーを対象者に向け、話し声から判定します。
実在するポリグラフなどの嘘発見器と違って、100パーセントの確度で判定できるものとします。
まず、うそ発見器で判定できるのは、あくまで「嘘かどうか」であって、「真実かどうか」ではないことを忘れてはいけません。人は、勘違いや記憶違いをします。嘘をついていないからといって、それが真実だとは限らないのです。
嘘発見器の用途といえば、容疑者の取り調べが思い浮かびます。けれど、うそ発見器の確度がたとえ100パーセントだとしても、参考になるだけで、確たる証拠にはならないのは、現在の嘘発見器と変わりないでしょう。
身近な人間関係でも同じです。日常的なすれ違いは勘違いから生じていることが多々あるので、うそ発見器だけでは判断できません。
「プロポーズ作戦」でも、言い分が食い違うのび助と玉子のどちらが正しいことを言っているのか、うそ発見器では判断できず、真実を知るために“タイムマシン”で過去へ行って確かめる羽目になりました。
うそ発見器が有用に機能するのは、明確な意図が介在する状況、たとえば商談・取引です。担当が余程の無能でなければ、勘違いや記憶違いを想定する必要があまりありません。図らずもこちらに不利な契約を結ばされることを避けられるでしょう。
詐欺は、明確にだます意図があるため、こちらも確実に防げます。
前述した「嘘ではない=真実である」という間違った先入観にとらわれてしまう恐れがあります。物事の判断をうそ発見器任せにするのは危険です。
身近な人間関係でつかれる嘘は、秘密を守るための方便であることが多いでしょう。なんでもかんでも嘘は暴けばいい、というわけではありません。友達や家族や恋人に対して勝手にうそ発見器を使うのは、モラルに反しています。
信頼性がとても低い、実在の嘘発見器ですら、被疑者の同意がなければ取り調べで使うことが許されないのですから。
本体がショルダー型で大きく、使うにはセンサーを相手に向けなければいけません。うそ発見器の設計は、秘匿性を度外視してます。
ポリグラフよりもはるかに信頼性が高い嘘発見器が情報機関で使われているという「信じるか信じないかはあなた次第」みたいな話もあるようです。うそ発見器は、現存する嘘発見器の延長線上のものに過ぎず、革命的な存在ではないでしょう。
悪徳業者の被害に遭うことは他人ごとではありません。リフォームなどの高額な契約をするときは、是非ともうそ発見器が欲しいところ。日常的に持ち歩くにはデカすぎるから出番は少ないだろうけど、ここぞというときには役に立ってくれるはず。
だけども、数あるひみつ道具の中から、あえて選ぶには決め手に欠けます。ということで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、うそ発見器の優先度は星
つです。さて、のび助と玉子のどちらが正しいことを言っていたかというと……、せっかくなので自分の目で確かめてください。「プロポーズ作戦」はてんとう虫コミックス第1巻に収録されています。大人でも楽しめるよくできた話ですよ。