しずかちゃんの飼い犬のペロは外で遊ぶのが大好きで、勝手にどこかに行ってしまいます。
そこでドラえもんは、しずかちゃんへの誕生日プレゼントとして、ペロにひみつ道具の“ヨンダラ首わ”を着けてあげました。
ドラえもんのヨンダラ首わは、生きものを強制的に呼び戻す首輪です。これをペットなどに着けて名前(固有名詞)を呼ぶと、その子の体がひとりでに動いて、どこにいても帰ってきます。
ペットを飼うこと。それは多かれ少なかれ人間のエゴだから、より良い関係を築くための努力をし続ける責任があります。ペットの体を道具で強制的に操作するなんて愚行は許されません。
軍用犬や闘犬になるような強力な犬種を飼う際の安全装置としてなら? ここ日本でも土佐犬による死傷事故が定期的に起こっています。そういった事故を防ぐ目的なら許容のうちでしょう。
問題は「名前を呼ぶ」という発動条件です。ヨンダラ首わを着けたら無闇に名前を呼べなくなってしまいます。これは致命的な欠点です。
やはりペットに使う線はありません。
しいていえば、SMプレイの道具としては優秀でしょう。人間相手なら、ヨンダラ首わを着ける意思確認ができます。成人が合意のうえで使うのは自由です。好きなだけ絶対服従に酔えます。
音声を認識するひみつ道具は総じて文脈を無視します。ヨンダラ首わもまた例外ではありません。
しずかちゃんがヨンダラ首わを着けたときは、「しずちゃん」という呼びかけだけではなく、童謡「静かな湖畔」の歌詞にも反応しました。
誰かがどこかで名前と同じ音の言葉を発するだけで効果が発動して、しかも意思とは無関係に体が動いて止められないのだから、いつかは事故が起こります。
ヨンダラ首わを着けた人がホームドアのない駅にいるときに、電車が通過するタイミングで向かいのホームから名前を呼んだら……。
ヨンダラ首わは強制的に体を操るため、どうしても動きが不自然になります。それに誰が名前を呼んでも発動します。
首輪だけで体を操るなんてことは現代の科学では考えられないとはいえ、内密にするのに不利な条件がそろっているからには油断は禁物です。
生きもの1固体を呼び戻す効力だけで社会を変える? どうやって?
Twitterには迷い猫に関するつぶやきがあふれています。愛猫家にとってヨンダラ首わの効力は垂涎の的でしょう。
しかしペットとのコミュニケーションの基本中の基本となる「名前を呼ぶ」が発動条件なのでは使い勝手が余りにも悪すぎます。意図したときだけ発動できるような条件でないのが惜しい。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ヨンダラ首わの優先度は星
つです。