もしも「トレーサーバッジ」をもらったら

草野球チームのマネージャー役を押しつけられたのび太は、次の試合の予定を伝えるためにメンバーを探して町内中を歩き回る羽目になりました。そこでドラえもんがのび太に貸してあげたひみつ道具が“トレーサーバッジ”です。

機能と効果

ドラえもんのトレーサーバッジは、位置情報を把握する機器です。

位置情報を発信するバッジ「トレーサー」と、それを受信して地図上に表示するタブレット型端末「レーダー地図」がセットになっています。

複数個あるトレーサーはそれぞれ星形やスペード形など固有の形状をもっており、レーダー地図にはその記号が表示されます。

ドラえもんからもらえる1セットのトレーサーバッジに含まれるのは、レーダー地図1個と、原作漫画で描かれた10個のトレーサーとします。

有用性: ★☆☆☆☆

人や物の場所をリアルタイムに追跡するのは――追跡対象の了承を得ているのなら――間違いなく有用です。児童の見守りを目的とする需要はとても多いでしょう。

それだけに、同様の機能をスマホで実現したサービスを大手の通信キャリアがこぞって展開しています。

スマホを持たせるにはまだ早いお子さんや、バイクなどの盗難防止にも使えるように、専用の発信機を用いたサービスも別途あります。こちらは警備会社も参入しています。

そうです、もはやトレーサーバッジに新規性などないのです。たしかに便利だけれども、「ひみつ道具ならでは」という有用性はすでになくなってしまいました。

危険性: ★☆☆☆☆

子供が小さなうちはともかく、いつまでも居場所の監視を続けるのは過干渉です。子供の成長に合わせていつかはトレーサーバッジを持たせるのをやめないと、世にいう毒親になってしまうかもしれません。

悪用度: ★★★★☆

ひみつ道具ならではの有用性はなくなったと前述したけれど、悪用となれば話は別です。現存するGPS機器は「いかにも」な形状だからです。

トレーサーバッジなら薄くて小さい上に、見た目はただのバッジです。これが位置情報を発信する物だとは、デジタル家電に詳しい人でも思いもよらないでしょう。

ストーカー気質な人の手にトレーサーバッジが渡るようなことがあってはなりません。

秘匿性: ★★★★★

トレーサーバッジの外観は、レーダー地図はありふれたタブレット型端末だし、トレーサーはありふれたバッジです。位置情報を取得して地図上に表示する機能もスマホが普及した現代ではありふれたものになりました。

「未来から時を越えてもたらされたひみつ道具」だと明かしても、かえって誰にも信じてもらえないくらいでしょう。

革命度: ★☆☆☆☆

レーダー地図がタッチパネルではなく物理キーで操作(1)するあたり、トレーサーバッジは我々の暮らす現代においても「枯れた技術」だといえる要素を含んでいます。

唯一トレーサーの体積の小ささは位置情報を発信する機器としては目を見張るものがあります。しかしそれとて近い将来に実現可能でしょう。

トレーサーバッジは「時代に追いつかれたひみつ道具」です。

(1)タッチパネルが主流となっている2017年1月27日に放送されたアニメ版(第2作第2期)でも、原作が尊重されて物理キーのままでした。

まとめ

位置情報を追跡するサービスは便利だからこそ、現実世界でもここまで発展したのです。もちろんトレーサーバッジも便利だろうし、サービス事業者に依存せずにスタンドアローンで使えるという優位性もあります。

それでもやっぱり現実的過ぎて、「もしもドラえもんのひみつ道具を一つだけもらえたら」という妄想にトレーサーバッジはふさわしいとは思えません。というわけで、トレーサーバッジの優先度は星1つです。

道具名称:
トレーサーバッジ
原作初出:
『ドラえもん』第9巻「トレーサーバッジ」
カテゴリ:
「と」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第9巻 / 実現 / 探索 / 通信
公開日:
2017年01月26日

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