ひみつ道具に頼り過ぎたのび太が痛い目に遭うのはいつものこと。それは自業自得だから仕方がないけれど、とばっちりを食った人にとっては迷惑千万な話です。中でも“アラビンのランプ”を使ったときは、とばっちり度が半端ないことになりました。
映画『アウトレイジ』ばりに暴力的な騒ぎを招くこのアラビンのランプ。欲しいか、欲しくないかと問われればもちろん……。
ドラえもんのアラビンのランプは、『アラジンと魔法のランプ』を模したひみつ道具です。このランプをこすると中からジーニー……もとい“けむりのロボット”が現れて、呼び出した人の命令をなんでも遂行します。
けむりのロボットは、大人を片手で軽々と持ち上げる怪力と、自由に空を飛ぶ能力を備えています。その一方、知識レベルがとんでもなく低い。
命令を自分で遂行する頭がないため、手短な人を捕まえて力ずくで代行させます。人に危害を与えることもいといません。ロボット三原則に相当する規律は元より、最低限のモラルすら守らない荒くれ者です。
一度受けた命令は、なにがあっても遂行しようとします。けむりのロボットの任務を中止させるには、ランプについている取り消しボタンを押すしかありません。
取り消しボタンを押すか、命令を完遂すると、けむりのロボットはランプの中へ戻ります。そのあともランプをこすれば何度でも呼び出せます。
アラビンのランプから現れるけむりのロボットは、無償で仕えてくれる使用人……ではなく、手下のゴロツキです。
のび太がけむりのロボットに「ストーブを点けて」と命令すると、ほかの部屋で寝ていたドラえもんを叩き起こして、ドラえもんにストーブを点けさせました。その程度の用事ですら第三者に強要します。
しまいには、100万円が欲しいと言ったのび太のために強盗騒ぎまで起こす始末。けむりのロボットに用事を頼むと終始こんなありさまです。
なんでも命令を聞いてくれるといったって、これでは有用性もへったくれもありません。
けむりのロボットの性質上、ご近所トラブルになること必至。そればかりか、犯罪の首謀者として逮捕されることすらあるでしょう。
アラビンのランプを使うには、それ相応の覚悟が必要です。
なにかにつけて強迫や窃盗をするけむりのロボットを使うことは、悪用にほかなりません。犯罪すれすれのひみつ道具も多いとはいえ、ここまでストレートに「使用イコール悪用」なものは珍しいくらいです。
モラルが欠如しているけむりのロボットは、銀行強盗でもなんでも、命じられたままに実行することでしょう。
けむりのロボットに下手に命令すると、自分の元へ誰かを連れてきてしまいます。それが自宅だったりしたら目も当てられません。
人けのない場所で、目だし帽などで顔を隠して待機して、ようやく最低限の秘匿性が確保されます。
それでも結局は秘匿しきれないでしょう。「けむり」のロボットとはいうけれど、煙のように消えるのはランプに戻るときだけで、行動中ははっきりと目に見えるのだから。
けむりのロボットがもくもくと現れる様子からは、高度に発達したナノテクノロジーを使っていることがうかがえます。「ロボット」というからには機械的な仕組みなのだろうから、ほかのひみつ道具よりも解析できる可能性が高いでしょう。
ごろつきと大差ないけむりのロボットを使っても世の中はなにも変えられないけれど、使われているオーバーテクノロジーを応用できれば革新的な発展が見込めるかもしれません。
アラビンのランプは、犯罪の片棒を担ぐことになる、危険極まりないなひみつ道具です。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、アラビンのランプの優先度は星
つ。面倒なトラブルや、犯罪に巻き込まれるのは、まっぴらごめんです。