家の前を流れるドブの掃除をお母さんから頼まれて、のび太がいやいや泥をさらっていると、中から百円玉が出てきました。
こうやって眠っているお金を再び世に出せば、経済の貢献になる! そう考えたのび太がドラえもんにお願いして出してもらったひみつ道具が“カネバチ”です。
ドラえもんのカネバチは、落ちているお金を拾い集めるハチです。
幅40cmほどの巣箱に数十匹が入っていて、蓋を開けるとすぐさまお金を探し始めます。不思議な探査能力を備えており、ドブや草むらの中に落ちていて視認できないお金も難なく見つけ出します。ただし拾うのは裸のお金(1)だけです。
人間の言葉を理解するほどの知性と感情をもってるものの、お金を拾い集める以外のことはできないし、巣箱に集まったお金を取っても怒りません。
行動範囲はどの程度なのか、また人工生物なのかロボットなのかは不明。当サイトでは、カネバチは行動範囲が2km(2)のハチ形ロボットだと仮定します。
(1)財布などに入っていない、むき出しで落ちている金銭。
(2)ニホンミツバチの行動範囲が巣から約2kmだと観測されていることに倣いました。
たとえ小銭であろうとネコババするのは遺失物等横領罪に抵触します。けれど警察に届けようにも、そのお金が落ちていた場所がわからないことには始まりません。カネバチが拾った場所を確認する術はないのでお手上げです。
そもそも人の欲望を集める「お金」という物をハチが運んでいたら、あっという間に噂(うわさ)になってしまいます。我々の暮らす現代社会でカネバチを運用するのは道理が通らないでしょう。
お金はトラブルの元です。過去のニュースを振り返れば、わずかな金額が元で傷害や殺人にまで及んだ事件もありました。秘匿性に欠けるカネバチでお金を集め続ければ、いつかトラブルに見舞われるでしょう。
ちなみにカネバチに無茶なことを指図すると怒って攻撃してきます。これは別段指図する必要がないので問題にはなりません。
カネバチが集めたお金を警察に届けないのは遺失物等横領罪だと前述したけれども、それは杓子定規(しゃくしじょうぎ)が過ぎるかもしれません。
実際問題、落とし主と警察の労力に見合わない小銭は、拾っても届けないのが暗黙の了解でしょう。
それでもなお、藤子・F・不二雄先生はカネバチを使うのは遺失物等横領罪にあたると作中で明記(3)しています。当然『ドラえもん』ファンとしては、F先生のモラルを尊重して、「無届けなら悪用」と断言せざるを得ません。
(3)原作では同義の「しゅうとくぶつおうりょう罪」と表記されています。
お金を運ぶハチ。なんてキャッチーな題材! まずはSNSで拡散されて、すぐにテレビ局が取材に来るでしょう。カネバチの巣がある自宅を特定されるのも時間の問題です。
要するにカネバチは自律飛行する超小型のドローンです。
近年におけるAIとドローンの目覚ましい進歩を考えれば、お金が落ちている場所を類推して効率的に発見することも、必要なメカニズムをカネバチのサイズに収めることも、そう遠くない未来に実現可能だといえるでしょう。
「町中に落ちているお金をかたっぱしから集めたらすごい金額になるんじゃね?」
なんてアイデアは安っぽいがゆえにむしろ夢のある話に思えます。でも残念ながら、カネバチの存在が世間にバレるまでのあいだに集められるお金は高が知れているし、遺失物等横領罪に抵触する問題も残ります。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、カネバチの優先度は星
つです。