自分の未来のお嫁さんはいったいどんな人なのか、のび太は確かめたくなりました。そこでドラえもんと共に“タイムマシン”で25年後へ行ったものの、直接会うとなるとのび太は照れてしまって、陰からこっそり見たいと言い出します。
それならとドラえもんが取り出したひみつ道具が“とうしめがね”です。
ドラえもんのとうしめがねは、物体を透視するひみつ道具です。見た目は虫メガネですが、拡大レンズではない、いわば「ダテ虫メガネ」です。これを通して見ると、一番手前の物体を透かしてその先が見られます。
我々の生活圏にある、透視でもしなければ中が見られない箇所はたいていプライベートな空間だから、モラルに反さない透視の使い道となると限られます。
とうしめがねを持っていれば、ふとしたときに役立つことはあるだろうけど、その出番はさして多くはないでしょう。
ふだん使いではなく、専門的な分野における調査や検査なら、手軽に透視できる道具として重宝するはず。
なんにせよ、とうしめがねが悪用向きなのは明らか。無条件に有用とはいえない、危ういひみつ道具です。
対象物に(疑似的とはいえ)穴をあける“通り抜けフープ”とは違って、とうしめがねは対象物に直接作用しません。想定外の事態は起こりにくく、安全性が保たれます。
しいて挙げるなら、見てはいけないものを見てしまって、心理的ショックを受ける危険性はなきにしもありません。
「透視ができる」と聞けば、やましい考えが頭をもたげるのが人の性(さが)でしょう。のぞきや盗撮といった犯罪行為に透視機能はあつらえ向きです。
とはいえ、対象物のすぐ近くでなければ透視できないとうしめがねは、犯罪行為が発覚しやすいひみつ道具です。遠方から透視できる望遠機能を備えた“スケスケ望遠鏡”に比べればかわいいものです。
ちなみにとうしめがねにはピント合わせなどの調整機能がいっさいないため、服だけを透かして裸を見ることは至難の業だと推定されます。
今の時世に街角で虫メガネをのぞき込んでいたら、不審者としてマークされかねません。とうしめがねは人前で使いにくいでしょう。もちろん一人きりのときに使う分には問題ありません。
透視技術は諜報活動や軍事行動における需要が高く、常に研究開発が進められているはずです。とうしめがねを是が非でも入手して分析したい機関はいくらでもあるでしょう。
たとえば映画でよく見るような部隊の突入作戦では、とうしめがねの類いがあれば突入前の捜索がより確実なものとなり、隊員の生存率が高まります。
とうしめがねの存在を明かさずに、自分一人でこっそり使うなら、社会的影響を心配するには及びません。
もしも隣室の住人がとうしめがねを持っていたら? そう考えるとぞっとします。そんな物をもらっても、ろくなことがなさそうです。
仮にもらうにしても、手軽さ以外は完全に上位互換にあたるスケスケ望遠鏡のほうがお得です。というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、とうしめがねの優先度は星
つです。