
ちょっとした遠出から異世界への冒険まで、のび太とドラえもんはひみつ道具を駆使して、なにかと飛び回っています。腹が減っては戦はできぬ。その行き先がどこにしろ食事は必須!
そこで出番となるひみつ道具が「グルメテーブルかけ」です。
ドラえもんの「グルメテーブルかけ」は、注文した料理がなんでも出てくるランチョンマット(プレースマット)です。
これをダイニングテーブルなどの平らな場所に敷いて料理を口頭で注文すると、すぐにその料理が浮かび上がるように出現します。料理は食器に盛られているけれど、スプーンなどのカトラリーは基本的には付いていません。
さてこの「グルメテーブルかけ」、いくらドラえもんのひみつ道具にしたって、チート級にもほどがあります。
普通に考えれば、料理を出すにはなんらかの対価が必要なはず。しかし漫画『ドラえもん』で対価について語られたことは一度もありません。
当ブログ『もしも道具』では、藤子・F・不二雄先生による原作漫画を聖典としているため、「グルメテーブルかけ」は「対価を一切必要としない」ものとします。
「グルメテーブルかけ」があれば、無料の食事すなわち「タダ飯」に一生ありつける!
食事を用意する時間と費用をまるっと節約できて、しかもちゃんと美味しい。そこに落とし穴はありません。ただただ便利です。
充実した食事は心の余裕にもつながります。いわゆる「衣食足りて礼節を知る」ってやつです。「グルメテーブルかけ」は食事にとどまらず、充実した人生の足掛かりになり得ます。
「飲食業で一儲け」なんて考えはちょっと待った。会計に材料費をいっさい計上しないのも、調理している気配すらないのも異様です。「なにかおかしい」と目をつけられます。
商売に使うと「グルメテーブルかけ」の存在が明るみに出てしまうリスクが急激に高まるので勧められません。
料理を出すだけのひみつ道具にデメリットなんてない……とも言い切れません。「美味しい料理がいつでも無制限に食べ放題!」なんてのは悪魔的な誘惑です。これは自制心が試されます。
「グルメテーブルかけ」は食事のハードルを良くも悪くも極端に下げます。スタイル維持を心掛けているなら、より一層のメンタルコントロールが必要になるでしょう。
ところで、ドラえもんは壊れたひみつ道具を「四次元くずかご」に捨てています。
「四次元くずかご」からのび太が拾った古びた「グルメテーブルかけ」からは、変な臭いと味の料理が出てきました。「こんなの食べたら食中毒になるわ」[1]としずかちゃんが言ったほどです。
22世紀のキッチン用品とはいえ、食料に関するものだから、しっかり衛生的に保ちましょう。
「グルメテーブルかけ」を悪用する手立てはこれといってありません。
ランチョンマットから魔法のように料理が浮かび上がってくる様を見れば、それがこの世のものではないのは誰の目にも明らかです。人前で使った場合の秘匿性は無きに等しいでしょう。
一家の食費が浮けば大きく家計が助かるから、せめて家族とは使いたい。でも悲しいかな、家族の秘密ですらバラしてしまう人はいます。知る人が増えるだけ秘匿性が下がっていくのは避けられません。
誰にも明かさずに、「グルメテーブルかけ」を自分一人で独占するなら秘匿性に問題はありません。
無から有を生み出しているがごとく超越的な「グルメテーブルかけ」とはいえ、たった1枚じゃ……。
一人前の料理が3秒で用意できるとして、24時間フル回転で2万9800食分。これで出来る社会活動は炊き出しがせいぜいです。炊き出しの手段としては革命的だけど、社会が変わるほどのインパクトはありません。
人類がウン十億人もいることを考えると、1枚の「グルメテーブルかけ」が持つ社会的な影響力は思いのほか弱いといえるでしょう。
「グルメテーブルかけ」は「ドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、どれにする?」という質問で人気があるのも納得の優れものです。
危険性も悪用性も低くて使い勝手が良いばかりか、活躍する機会が日常的にある。大きなデメリットがない「グルメテーブルかけ」は、ひみつ道具から一つだけ選ぶ際に適した選択肢といえます。
「ひみつ道具がもらえる」という夢物語にしては生活感のある現実的な選択だけど、これほどの実用性があればそれもやむなし。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、「グルメテーブルかけ」の優先度は星つ。当ブログ的「欲しいひみつ道具ランキング」にランクインです。
ドラえもん(31) (てんとう虫コミックス)