
日焼けがしたくて水着姿で屋根の上に出ていたのび太が空に向かって怒鳴っています。太陽を隠している雲に文句を言っているのです。
その様子を見て「アホか君は」と呆れたドラえもんは、ひみつ道具の「雲コントローラー」をのび太に貸してあげました。
ドラえもんの「雲コントローラー」は、付近の雲を操作する機械です。
スイッチを入れると筐体の中に付近の雲そっくりのミニチュア雲が発生します。付属品の雲ベラとピンセットでミニチュア雲を移動させたり、形を変えたりすると、現実の雲も同じように変化します。
のび太たちは「雲コントローラー」を使って、日焼け用の日なたを作ったり、庭の草むしりをしていたママを日陰にしてあげたりしました。
温暖化が進んで、今や夏の日差しは殺人級。雲がかかっているか否かの違いはバカにできません。だから地味に便利……かと思いきや、「雲コントローラー」には致命的な欠点が!
それはのび太が「雲コントローラー」の電源スイッチを切り忘れて点けっぱしにしていたときのこと。黒々とした暗雲が空一面に立ち込めたのです。
ドラえもんによると内部の機械が焼けてしまったのが原因だとか。点けっ放しといっても、たかだか数時間なのに! 長時間の連続稼働はNGなわけです。
短時間しか使えないとなると、なにをやるにも一時しのぎにしかなりません。
そういえばのび太は日焼けのことも忘れて、雲を果物や動物の形にするのに夢中になりました。「粘土遊び」ならぬ「雲遊び」です。実用性は忘れて、遊び道具にするのが正解でしょう。
過熱した「雲コントローラー」から黒煙があがると、辺りの空も黒煙のような暗雲で覆われました。ドラえもんが慌ててスイッチを切ったけど、そのまま放っておいたら、いったいどうなるのか……。
未来の物とはいえ、ひみつ道具の大半は安物や使い捨て[1]なので安全対策がなっていません。くれぐれも電源の入れっぱなしには気をつけましょう。
雲の位置や形が変わったところで、さしたる悪影響はありません。けれどあたりが暗くなるほど暗雲が空を埋め尽くしたら、気分が釣られて暗くなる人もいるでしょう。
楽しい気持ちを台無しに。屋外イベントとかの気分が上がる状況を狙い撃ちして、わざと「雲コントローラー」を過熱させて暗雲を召喚……。いや、非日常感が高まって、むしろ盛り上がる?
いずれにしろ、雨風はなく、暗くなるだけだから、しょうもない嫌がらせです。
あなたが最後に空の雲を眺めたのはいつですか? 今や空どころか、歩きスマホで前すらろくに見ない人もいるくらいだから、雲を少しくらい動かしたところで気づかれはしないでしょう。
もちろん、「自然のイタズラ」とは考えられない、明らかに人為的な雲は別です。たとえば雲を文字の形にして空にメッセージを描くような真似をすれば、さすがに目が向きます。
まあ話題になったとしても、「どこの誰がどうやって」まで突き止められるとは思えません。
天候を自由自在に操れるなら、気象兵器としてのポテンシャルがあるとすら考えられ、世界への影響は甚大です。
しかし「雲コントローラー」ができることといえば、近場の雲の位置と形を変えるくらいです。なにか大きなことを成し遂げるといったひみつ道具ではありません。
「雲コントローラー」を手にしたのび太は果物や動物の形をした雲を作って大喜び。おそらくは、そんな「雲遊び」がこのひみつ道具の真髄です。
そりゃ楽しいだろうけど、22世紀のテクノロジーを先取りできるなら、もっとほかにやるべきこともやりたいこともあるでしょ!
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるとしたら、「雲コントローラー」の優先度は星つです。
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