ドラえもんがのび太と喧嘩ばかりしているのを“タイムテレビ”で見たセワシは、試しにのび太の世話役をドラミちゃんに代わってもらうことにしました。
ドラミちゃんは持ち前の要領の良さを発揮して、のび太の問題を次から次へと解決します。そのときに使ったひみつ道具の一つが“瞬間昼寝ざぶとん”です。
ドラミちゃんの瞬間昼寝ざぶとんは、瞬間的に寝れる座布団です。これを枕にすると、一瞬で眠りについて、次の瞬間には目が覚めます。
瞬間昼寝ざぶとんを使ったのび太の感想が「あ~、よくねた」だったことから、一瞬にして十分な睡眠がとれると推定されます。
寝てるあいだは遊ぶことも仕事をすることもできません。生きるために必要な生理現象とはいえ、「時間がもったいない!」と思う人も多いことでしょう。
20年――。毎日6時間寝る人が80歳になったとき、生涯で睡眠に費やした時間を合計すると20年です。毎日の睡眠をこの瞬間昼寝ざぶとんで済ませれば、その20年がまるまる自由になります。
自由に使える時間、いわゆる「可処分時間」は人生における貴重な財産です。睡眠時間を可処分時間に変えられる瞬間昼寝ざぶとんの価値は計り知れません。
でもちょっと待って! 「瞬間昼寝ざぶとん」ってネーミングが気になりませんか? 「睡眠」じゃなくて「昼寝」、「枕」じゃなくて「座布団」なんです。なぜ、あえて昼寝に限定しているのでしょう。
一般的に昼寝は短い時間で済ませます。頭をリフレッシュするには十分でも、体を休めるには不十分です。それと同様に瞬間昼寝ざぶとんも「体の休息」はとれないのかもしれません。
なんにせよ、我々人間の体が睡眠を定期的にとること前提で構成されているからには、瞬間昼寝ざぶとんを使ってもなお無茶な活動は控えることです。
人間、生きているだけでお金が掛かります。瞬間昼寝ざぶとんを使って24時間フルに活動すれば、光熱費やら食費やらと出費がかさむことでしょう。
えっ、「そんなの誤差みたいなもん」だって? たしかに。なら体はどうでしょう。体はいわば「消耗品」です。
老化は加齢によるものだけではありません。寝ずに体を酷使する生活を延々と続けたら、人より早く老けるかもしれません。
出費のわずかな差には目をつぶれても、老いのわずかな差には目が離せないなら、「不眠生活」には注意しましょう。
「一瞬でぐっすり眠れる」という効力を犯罪に結びつけるのは困難です。
どこの誰がどれだけ寝ているかは、他人が知る由もありません。けれど寝室を共にしている間柄なら、何日も寝ていないことに気がつくでしょう。
瞬間昼寝ざぶとんを使って不眠生活を送りたいからといって、下手に「寝室を別にしたい」なんて切り出すと、余計な詮索をされて関係性がこじれます。
瞬間昼寝ざぶとんは独り身専用かもしれません。
凡人が不眠不休で活動したところで世界は変えられません。それではアルベルト・アインシュタインのような知の巨人なら?
歴史に名を残すレベルの知性の持ち主が瞬間昼寝ざぶとんで活動時間を伸ばせば、それだけ人類の化学技術は早く発展するでしょう。
「どれだけ時間があっても足りない!」という焦燥感に駆られている人が瞬間昼寝ざぶとんで可処分時間を増やしても、「それでも時間が足りない!」と更に焦燥するだけに思えます。
「もっと時間が欲しい」という悩みを解決するために瞬間昼寝ざぶとんをぼうとしているなら、その前に「なぜ時間が欲しいのか」を今一度考えたほうが良さそうです。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、瞬間昼寝ざぶとんの優先度は星
つです。