剛田家で飼っている犬のムクはたくましくて男性的で俺に似ているとジャイアンはみんなに自慢しました。それなのにムクはみんなが見ている前で猫にケンカで負けてしまいます。
するとジャイアンは恥をかかされたと激高して、こともあろうにムクをバットで滅多打ちにしました。
これはもう動物虐待で、いくらなんでもひどすぎます。そこでドラえもんがムクのために取り出したひみつ道具が“ペットそっくりまんじゅう”です。
ドラえもんのペットそっくりまんじゅうは、ペットと飼い主の顔をそっくりにさせるまんじゅうです。
このまんじゅうをペットに食べさせると、飼い主によく似た顔立ちに変化します。飼い主が食べると、ペットに似た顔立ちに変化します。
人に飼われていない動物や、ペットを飼っていない人が食べた場合はなにも起こりません。
ただしペットと飼い主の関係が成立していると見なされる条件がゆるいため、餌づけしている野生動物などにも効力が発動します。
効力の有効時間は不明。ここでは2時間と仮定します。また、もらえる数は10個とします。
ペットは飼い主にだんだん似てくるといわれています。科学的な面はさておき、実際にそうだと多くの人から信じられています。
特にペットに対して親バカな飼い主なら、ペットが自分に似てきたらうれしいものでしょう。
そこでペットそっくりまんじゅうを……、いや、薬剤で人為的に似せるなんて筋違いです。自然に似てこそ「絆の証」として意味を持ちます。
なんにせよ、短時間かつ回数限定では自己満足するにも足りません。
飼ってるつもりはなかったのに飼い主認定されたり、ペットや飼い主が複数いる場合にどうなるのか分からなかったりと、ペットそっくりまんじゅうは発動条件が曖昧です。
そのため意図と違う結果になる恐れがあります。ドラえもんは図らずもネズミ顔になってしまいました。効果は数時間で切れるものの、すこし嫌な思いをするかもしれません。
ペットそっくりまんじゅうは実際に人の顔を変化させます。アプリの「SNOW」で動物風に加工するのとはわけが違います。
普通のまんじゅうだと偽ってペットそっくりまんじゅうを人に食べさせるのは悪質極まりないイタズラです。顔が突然変形したら、誰だって相当なショックを受けるでしょう。
ペットそっくりまんじゅうを使うと、「ペットと飼い主は似る」という説では片づけられないレベルで似ます。なにかおかしなことが起こっているのは誰の目にも明らかです。
世界の片隅でペットと飼い主が似たからといって、それがいったいなんだというのでしょう。
自己満足のためにペットの顔を変形させるなんてエゴが過ぎます。自分の顔を変えるならお好きにどうぞ。でも、たとえいっときだとしても顔が変形することに耐えられるでしょうか。
ペットそっくりまんじゅうをペットに食べさせるにしろ自分で食べるにしろ、まともとは思えません。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ペットそっくりまんじゅうの優先度は星
つです。