スネ夫の家にのび太とジャイアンがお邪魔していたとき、近くに雷が落ちました。臆病なのび太は思わず押し入れに逃げ込みます。それを見たジャイアンらはのび太を笑い者にしました。
恥ずかしくて家に逃げ帰ったのび太からこの話を聞いたドラえもんが、のび太を雷に慣れさせるために取り出したひみつ道具が“カミナリ雲(ぐも)”です。
ドラえもんのカミナリ雲は、小さな人工の雷雲です。
30cmほどの大きさで、地表1.5mほどの高さにフワフワ浮いています。プルスイッチのひもを引くと、「ゴロゴロビシャッ⚡」っと雷が落ちます。
カミナリ雲による落雷の電流と電圧は不明です。作中でこの雷に打たれた人は、着ている服が黒焦げになったものの、気絶したり、やけどを負ったりはしませんでした。
人が雷に打たれたら、ただでは済みません。雷を怖がるのは自己防衛本能として当然のこと。とっさに逃げたのび太を笑い者にする筋合いはありません。
逆にいえば、恐怖のあまり足がすくんで逃げられないようでは困ります。極端に雷が苦手な場合は、恐怖心を克服する手段としてカミナリ雲が有効です。
でも身に危険が及ぶほど近くに雷が落ちるなんて一生に一度あるかないかの場面です。それにわざわざ備える必要性は低いでしょう。
ここは軽薄に、落雷のスリルを味わうアクティビティにするのがカミナリ雲のおあつらえ向きな活用方法だと考えられます。
カミナリ雲による落雷の威力は、人体に危害を与えないように調節されています。それでも落雷は落雷です。油断は禁物です。
少なくとも、着衣は黒焦げになります。お気に入りの服を台無しにしないためにも、カミナリ雲の取り扱い際には注意しなければなりません。
たとえ負傷しない威力でも人に電気ショックを与えたら、それはもう暴行です。
ただしカミナリ雲の射程は狭いため、目と鼻の先まで近づかないと雷を当てられません。相手にこちらの姿を見せる羽目になるし、一歩間違えれば自分に雷が落ちるしと、悪事には不向きです。
雷雲が黒く見えるのは太陽光を遮るほどの厚さがあるからです。
一方、カミナリ雲は30cmほどのサイズなのに黒く見えます。これはつまり通常の雲とはまったく異なる未知の存在であることを意味しています。
おそらくカミナリ雲をまのあたりにしたら、誰もがその異様さに感づくでしょう。
大気の状態とは無関係に帯電し続けるカミナリ雲には、我々現代人の常識を超越したテクノロジーが用いられている……のでしょうか。
もしかしたら、単純に大容量バッテリーを内蔵しているだけかもしれません。
どのみちカミナリ雲1個が放出する電力は、社会に影響をもたらす規模に満たないでしょう。
安全な場所から観る稲光の美しさは格別です。暖炉の火をいつまでも眺めていられるように、カミナリ雲の落雷もまた時間を忘れさせてくれるはず。
けれどそれは欲しいひみつ道具ランキングの上位候補になり得るような特別な価値とは違います。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、カミナリ雲の優先度は星
つです。