クローン人間を作り出すことが技術的に可能となっても、倫理的な問題から禁止されるだろうと予測されています。
けれどドラえもんの生まれた未来は我々の暮らす現代とは倫理観が異なるようで、クローン人間どころか、さらに一歩踏み込んだ技術まで実用化されています。その名もずばり“人間製造機”です。
ドラえもんの人間製造機は、人間の赤ちゃんを人工的に製造する機械です。
人体を組成している成分を含んでいる身の回りの物品を材料にして、それらから取り出した成分を人間へと再構築します。次が必要となる材料のリストです。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』第8巻「人間製造機」より
- 脂肪
- 石鹸(せっけん)1個など
- 鉄
- 釘(くぎ)1本など
- 炭素
- 鉛筆450本など
- 石灰
- コップ1杯分
- 硫黄
- 1つまみ
- マグネシウム
- 1つまみ
- 水
- 1.8リットル
さてこの人間製造機、実はとんでもない欠陥品でした。これから生まれた人間はもれなく、強い超能力をもち、生まれたときから大人並みの知性を備え、そして人間に敵対するミュータントだったのです。
未来の世界では彼らが人間を征服しようとして、国連軍が出動するほどの事態に陥りました。
ただでさえ人間(ひいては生物全般)を人工的に作り出すのは肯定しがたいことなのに、それが人間を征服しようとするミュータントとなれば、是非を問うまでもないでしょう。
ミュータントは誕生してすぐに念力を使ってドラえもんを屈服させました。さらには、哺乳瓶を落として割ったしずかちゃんを超能力による電撃で殺そうとしたのです。その肉体は赤ちゃんでも、超能力を使われたら太刀打ちできません。
人間製造機に入れた材料を用意したのび太は自分が父親だと言って説得したものの、ミュータントは聞く耳を持ちませんでした。
話し合いでも、実力行使でもミュータントを抑止できないのです。一人でもミュータントを製造したが最後、すぐに材料を集めて仲間を増やし始めるでしょう。
ひみつ道具が普及している未来の世界でさえ軍隊の出動が迫られたのだから、我々が暮らす現代社会ではなすすべがありません。征服されるのも時間の問題です。
ミュータントが従来の人間に攻撃を仕掛けることを知っているにもかかわらず人間製造機を使うことは悪事だといえます。ただし自分もその魔の手から逃れられない「死なばもろとも」という一蓮托生(いちれんたくしょう)の破滅型です。
ミュータントは人間製造機を使って仲間を増やしつづけ、我々人類に全面戦争を仕掛けてくるのだから、秘匿性などまるでありません。
当然人類は全力を挙げて対抗策を講じることになります。その調査過程で人間製造機自体の存在も明るみに出るでしょう。
人間製造機が巻き起こすのは、我々人類に取って代わってミュータントが地球の覇権を握る新人類になるという革命です。
人類とミュータントとの全面戦争が勃発したのち、その引き金を引いたのは一人の人物だと知った人々はどう反応するでしょうか。人間製造機の使用者が許されるはずもありません。断罪されても自業自得です。
たとえ全人類を巻き添えにしたいほど強い破滅願望を抱いていたとしても、そう思うに至った要因を解消できるひみつ道具がほかにあるはずです。どうしても人間製造機でなければならない理由はないでしょう。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、人間製造機の優先度は星世界を壊したい」入りです。
つ。願望別選別「