どうにもアイツは憎めない、と思われる人をうらやましく思ったのび太は、いつものようにドラえもんにおねだりしました。そんなのび太の押しに負けたドラえもんが渋々出したひみつ道具が“ニクメナイン”です。
ドラえもんのニクメナインは、服用すると「なぜか憎めない人」になれる錠剤です。
1錠につき1回だけ、本来なら憎まれるはずの状況をしのげます。たとえどんなことをしたとしても、怒りを買わず、嫌われもしません。
ドラえもんからもらえる量は12錠とします。
人から憎まれるのは、必ずしも自業自得とは限りません。不当に怒られた経験は誰にでもあるでしょう。そういう理不尽な怒りをぶつけてくる人(いわばモンスター)への対策として、ニクメナインは優秀です。
惜しむらくはニクメナインが消耗品なこと。家族や職場にモンスターがいる場合、あっという間に底を突いてしまいます。「ひみつ道具を一つだけもらえる」という条件下で頼るには心もとないです。
「憎まれない」ことによって生じる危険は考えられません。
なにをしても許される。つまり相手を好き放題にできるのだから、ニクメナインが反社会的な人の手に渡れば「悪魔の薬」と化すでしょう。
親告罪(被害者による告訴が起訴に必要な犯罪)でなければ第三者による通報は免れない点を踏まえても、ニクメナインはとても危ういひみつ道具です。
とはいえニクメナインは消耗品なので、同様のひみつ道具でさらに使用回数に制限のない“悪魔のパスポート”ほどの悪行は成せません。
ニクメナインの効力をかけられた人は、その許しを自分自身による選択だと信じて疑いません。憎むか、憎まないかは気持ち次第なので、それがニクメナインという外部要因によるものだと証明するのは不可能です。
ニクメナインによる限られた回数の免罪では社会を変えるまでに至らないでしょう。
相手にひどいことをする目的で使うのは論外としても、無用な憎しみから身を守る目的にも使えるのは魅力的です。しかし残念ながら消耗品なのでは後者の目的を達成するには不十分で、前者の悪用性ばかりが目に余ります。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、ニクメナインの優先度は星
つです。