明日にリサイタル(独唱会)を控えていたジャイアンが風邪をひいて、声を思うように出せなくなりました。
リサイタルを恐れていたみんながホッとしたのもつかのま、なんとジャイアンは自分の歌を録音していたテープを流して口パクするリサイタルを開催するというのです!
なんとかしてリサイタルを中止させようともくろんだドラえもんが思いついた対策方法、それがひみつ道具の“念録マイク”です。
ドラえもんの念録マイクは、心に念じた音を記録メディアに直接録音するマイクです。サイズは1.5cmほど。舌の上に乗せて使います。
原作のドラえもんによる説明だと、念録マイクはカセットテープ専用かのような印象を受けます。
しかしひみつ道具が作られたのは22世紀です。そこで当ブログでは、念録マイクはあらゆる記録メディアに書き込めると仮定します。
不意にひらめいたアイデアが、指の隙間からこぼれ落ちる砂のように記憶から消えてしまう。素晴らしいアイデアだったはずなのに!
頭の中で考えたことをそのまま音声ファイルとして残せる念録マイクがあれば、そんな悔しい思いをしなくて済む――かどうかは微妙なところ。「舌の上に乗せる」という発動条件が難点です。
ドラえもんたちのように思い切り出した舌の上に乗せるのはいかにも間抜けな絵面だし、口の中で乗せるにしたって、小さな機械をいきなり口に入れる姿もそれはそれで不審です。
人目を気にしながら念録マイクを使うのなら、スマホのボイスメモに録音するなりテキストエディタに入力するなりしたほうがマシでしょう。
念録マイクによる記録は当然ながら「上書きしますか? [はい / いいえ]」みたいな確認ダイアログは出ません。
ただ念じるだけで作用するので誤爆にはくれぐれも注意しましょう。さもないと大事なデータを上書きしてしまいます。
音声データで上書きされたファイルを完全に復元することはほぼ不可能です。つまり念録マイクを用いれば、記録メディアを見て念じるだけで、指一本触れずにデータを破壊できます。
あらゆる記録が電子データ化されたこの社会において、念録マイクは深刻な情報セキュリティリスクになり得ます。
ただし特別重要なデータが保存されているサーバーは、限られた関係者しか近づけないのはもちろんのこと、所在地すら明かされていません。
さしあたって念録マイクだけでできるのは、街中で人が使っているPCやスマホのデータを壊して困らせる愉快犯がせいぜです。
それでも、壊されたデータによっては一大事! いつか誰かが念録マイクを手に入れて蛮行を働くかもしれないから、くれぐれもバックアップは二重三重に取っておきましょう。
「この人、口の中になんか入ってるな」と気づかれることはあっても、「念じて録音してるな」と気づかれることはないでしょう。
ある日、世界中の記録メディアのデータが一斉に消失した――。
そんなアメリカ製の映画かドラマみたいな大それたことを思い立っても、念録マイク一つでは到底成せません。
人が頭の中で考えていることを読み取って入力するテクノロジーを使えば、究極の入力機器が作れます。
これに限らずひみつ道具に使われているテクノロジーは素晴らしいものばかりなのに、道具自体は良くも悪くもくだらない物ばかりです。
それはたぶん、ドラえもんのひみつ道具が安物の使い捨てだからでしょう。詳しくはリンク先を読んでもらうとして、とにかくひみつ道具に実用性を求めるのはお門違いということです。
それでも数あるひみつ道具から一つだけ選んでもらえるとなれば、なんとしてでも実用的なのを選び出したいのが当たり前。
というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、念録マイクの優先度は星
つです。