もしも「国際保護動物スプレー」をもらったら

絶滅が危惧されている動物がいることを新聞で知ったのび太は、動物を大事にしようと思いました。

そこでドラえもんが取り出したひみつ道具が“国際保護動物スプレー”です。

機能と効果

ドラえもんの国際保護動物スプレーは、希少な動物を保護するスプレーです。

これを動物に吹きかけると、「国際保護匂い」を出す「国際保護ガス」が体に染みついて、珍重されるようになります。

効力の有効時間と解除方法は不明です。ここでは有効時間は恒久的で、解除するにはほかのひみつ道具(1)が必要だと仮定します。

(1)例えば“タイムふろしき”など。

有用性: ★☆☆☆☆

たとえワシントン条約や各国の法律で保護されても、人間がそのルールを守らなければ無意味です。今でも絶滅危惧種の乱獲は絶えません。

そこで国際保護動物スプレーを使えば、そんな動物たちを守れます!

え? 絶滅危惧種には縁のない暮らしをしているって? それなら自分に吹きかましょう。今日からあなたは誰もが尊重してやまない重要人物です!

めでたしめでたし……とはいきません。残念ながら国際保護動物スプレーは致命的な欠陥を抱えています。

作中で国際保護動物スプレーを浴びたのび太を、「珍しい動物を飼いたい」という理由から捕まえようとした人が現れたのです。

いくら大事に扱われるとしたって、捕獲されては元も子もなくなります。確かに飼育も保護の一環だけれど、それは計画的であってこそ。興味半分の飼育は保護とはいえません。

動物を保護するにしろ、自分をあがめさせるにしろ、国際保護動物スプレーは役立たずです。

危険性: ★★★★☆

一言に「大事にする」といっても、それがどのような行動になるかは人それぞれです。ある人は遠くから見守るかもしれないし、ある人は捕獲して自分だけのものにするかもしれません。

人間に国際保護動物スプレーを吹きかけると、拉致監禁を招く恐れが多分にあります。

また、国際保護動物スプレーが効いている人間は野生動物のように扱われる場合があります。考えられる最悪の状況は、次の世代へつなげるために人工繁殖が試みられることです。望まぬ性交を強いられるかもしれません。

ガスは風に流されます。国際保護動物スプレーが図らずも人間にかかってしまわないように、くれぐれも風向きには気をつけましょう。

悪用度: ★★★★☆

国際保護動物スプレーが人間に吹きかかっても、初期の混乱を乗り切れば、動物愛護団体等による保護体制が確立して、身の安全は守られるはずです。

しかしそれは常に監視されることを意味ます。また「最後の一匹(2)」として好奇の目にさらされ続けます。そんな生活に耐えられる人がいるでしょうか。

国際保護動物スプレーは、人の平穏な日常を破壊する、恐ろしい一面を秘めたひみつ道具です。

(2)国際保護動物スプレーが効いている人間は、人々から「匹」で数えられます。

秘匿性: ★★☆☆☆

当然ながらガスは画面を通して伝わらないので、国際保護動物スプレーのかかった対象動物をネットやテレビで見ても、それを貴重な存在だと感じる効力は生じません。

対象動物を直接見た興奮をSNSで伝える人と、その投稿を見た人とのあいだで食い違いが現れます。

珍しくもなんともない動物に国際保護動物スプレーをかけてしまうと、その食い違いから、不思議な現象が起こっている事実が浮かび上がってしまいます。

現代の科学技術では国際保護ガスを検出できないとしても、無用な騒ぎを招かないように、国際保護動物スプレーはありふれた動物への使用を控えるべきでしょう。

革命度: ★★☆☆☆

国際保護動物スプレーを吹きかける動物によっては、多くの人を巻き込む騒動にまで発展するでしょう。

しかし絶滅危惧種の保護は既存の活動です。その対象が増えるだけでは、社会に変革はもたらされません。

まとめ

捕鯨やイルカ漁を巡る文化の衝突を鑑みると、国際保護動物スプレーはなかなか危ういひみつ道具です。

自分を特別な存在に仕立て上げる目的に使うにしてもリスクが高すぎます。病的な自己顕示欲の持ち主なら、あるいは満足のいく状況を得られるかもしれないけれど。

というわけで、もしもドラえもんのひみつ道具を一つもらえるなら、国際保護動物スプレーの優先度は星0.5つです。

道具名称:
国際保護動物スプレー
原作初出:
『ドラえもん』第27巻「のび太は世界にただ一匹」
カテゴリ:
「こ」で始まるひみつ道具 / 『ドラえもん』第27巻 / 生きもの
公開日:
2018年05月18日

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